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カラヴァッジョ(カラヴァッジオ)の生涯と特徴・代表作・作品解説

カラヴァッジョの作品を制作年および推定制作年が古いものから順に並べました。時代を追って作品を見ていくことで、カラヴァッジョの明暗表現の変化、カラヴァッジョがスター画家となり殺人を犯したあと逃亡先の地でも次々と作品を生み出していった様子などがお分かりいただけると思います。制作年には諸説あり多少前後している場合がありますので予めご了承ください。

カラヴァッジョ・ローマ初期(1500年代)の絵画作品

カラヴァッジョがローマに出て活動を始めたのは1590年頃。カラヴァッジョが『バッカス』でローマ・カトリック教会の枢機卿フランチェスコ・マリア・デル・モンテに才能を認められたのはこの時代です。1599年までの10年間には、カラヴァジェスキらに熱心に模倣された『ホロフェルネスの首を斬るユディト』などカラヴァッジョの代表作も生まれました。

カラヴァッジョ『静物』

カラヴァッジョ『静物』1590年ボルゲーゼ美術館

  • 作品名:静物
  • Title:a still life
  • 作者:カラヴァッジョ(カラヴァッジオ)
  • 制作年:1590年
  • 種類:油彩、キャンバス
  • 寸法:105cm×cm184cm
  • 所有者:ボルゲーゼ美術館

カラヴァッジョ『果物の皮を剥く少年』

カラヴァッジョ『果物の皮を剥く少年』1592年ロベルト・ロンギ美術史財団

  • 作品名:作品名:果物の皮を剥く少年
  • Title:A boy peeling fruit
  • 作者:カラヴァッジョ(カラヴァッジオ)
  • 制作年:1592年
  • 種類:油彩、キャンバス
  • 寸法:75.5cm×64.4cm
  • 所有者:ロベルト・ロンギ美術史財団

カラヴァッジョ『トカゲに噛まれた少年』

カラヴァッジョ『トカゲに噛まれた少年』1593年ロンドン・ナショナル・ギャラリー

  • 作品名:トカゲに噛まれた少年
  • Title:Ragazzo morso da un ramarro
  • 作者:カラヴァッジョ(カラヴァッジオ)
  • 制作年:1593年
  • 種類:油彩、キャンバス
  • 寸法:65.8cm×52.3cm
  • 所有者:ロンドン・ナショナル・ギャラリー

カラヴァッジョ『トカゲに噛まれた少年』には、ガラスの花瓶の陰にいたトカゲに右手中指を噛まれた少年が、突然の痛みに顔をゆがめ身体をすくめている様子が描かれています。

カラヴァッジョが描く少年は肌が露になっていることが多く、さらにその少年のまわりにはカラヴァッジョが得意であった果物や花が描きこまれています。ガラスの花瓶に映りこんでいるのは少年がいる室内の様子です。

カラヴァッジョ『病める少年バッコス』

カラヴァッジョ『病める少年バッコス』1593年頃ボルゲーゼ美術館

  • 作品名:病める少年バッコス
  • Title:Young Sick Bacchus
  • 作者:カラヴァッジョ(カラヴァッジオ)
  • 制作年:1593-1594年頃
  • 種類:油彩、キャンバス
  • 寸法:67cm×53cm
  • 所有者:ボルゲーゼ美術館

『病める少年バッコス』は、カラヴァジオがローマに出て来てすぐの頃の作品。作品のモデルは若き日のカラヴァッジョだという説が有力なので、この作品は肖像画でもあるということになります。画面の色が悪く見えるのは、病みを表現し肌の血色が悪いためです。

カラヴァッジョ『果物籠を持つ少年』

カラヴァッジョ『果物籠を持つ少年』1593年ボルゲーゼ美術館

  • 作品名:果物籠を持つ少年
  • Title:Fanciullo con canestro di frutta
  • 作者:カラヴァッジョ(カラヴァッジオ)
  • 制作年:1593年
  • 種類:油彩、キャンバス
  • 寸法:70cm×67cm
  • 所有者:ボルゲーゼ美術館

カラヴァッジョ『果物籠を持つ少年』は、画家ダルピーノが所有していた作品をボルゲーゼ美術館の礎を築いたボルゲーゼ枢機卿が入手し、現在もボルゲーゼ美術館が所蔵している作品です。

うつろな目と開いた口、ばら色の頬をした少年がモデルで、抱えた籠のなかの果物の静謐な表現に目を奪われます。

カラヴァッジョ『女占い師』

カラヴァッジョ『女占い師』1594年頃ローマ・カピトリーノ美術館

  • 作品名:女占い師
  • Title:The Fortune Teller
  • 作者:カラヴァッジョ(カラヴァッジオ)
  • 制作年:1594年頃
  • 種類:油彩、キャンバス
  • 寸法:115cm×150cm
  • 所有者:ローマ・カピトリーノ美術館

カラヴァッジョは『女占い師』という主題で2作品を残しており、もう1点(後述)はルーヴル美術館に所蔵されています。

カラヴァッジョ『懺悔するマグダラのマリア』

カラヴァッジョ『懺悔するマグダラのマリア』1594-1595年ドリア・パンフィリ美術館

  • 作品名:懺悔するマグダラのマリア(悔悛のマクダラのマリア)
  • Title:Maria Magdalena
  • 作者:カラヴァッジョ(カラヴァッジオ)
  • 制作年:1594-1595年
  • 種類:油彩、キャンバス
  • 寸法:106cm×97cm
  • 所有者:ドリア・パンフィリ美術館

『悔悛のマクダラのマリア』とも。少年をモデルにした絵画を多く手がけていた初期のカラヴァッジョは、何点かの宗教画も残しています。本作『懺悔するマグダラのマリア』と次にご紹介する『エジプトへの逃避途上の休息』に登場するマリアは同じ女性をモデルにしていると考えられています。穏やかな色彩でまとめられたなかに画面の左上から射し込む光がポイントとなった作品です。

カラヴァッジョがマグダラのマリアを主題とした作品には他に『法悦のマグダラのマリア』があります。

カラヴァッジョ『エジプトへの逃避途上の休息』

カラヴァッジョ『エジプトへの逃避途上の休息』1594-1596年ドーリア・パンフィーリ美術館

  • 作品名:エジプトへの逃避途上の休息
  • Title:riposo durante la fuga in Egitto
  • 作者:カラヴァッジョ(カラヴァッジオ)
  • 制作年:1594-1596年
  • 種類:油彩、キャンバス
  • 寸法:135.5cm×166.5cm
  • 所有者:ドーリア・パンフィーリ美術館

カラヴァッジョ『エジプトへの逃避途上の休息』は、長旅の途中で休憩する聖母子と、譜面を持つヨセフ、ヴァイオリンを奏でて聖母子に癒しを与える天使が描かれた作品。カラヴァッジョが外に広がる風景を描いているという点で貴重な作品です。

カラヴァッジョ『バッカス』

カラヴァッジョ『バッカス』1595年ウフィツィ美術館

  • 作品名:バッカス
  • Title:Bacchus
  • 作者:カラヴァッジョ(カラヴァッジオ)
  • 制作年:1595年
  • 種類:油彩、キャンバス
  • 寸法:98cm×85cm
  • 所有者:ウフィツィ美術館

カラヴァッジョ『バッカス』は、カラヴァッジョがローマ・カトリック教会の枢機卿フランチェスコ・マリア・デル・モンテに気に入られるきっかけとなった作品。ブドウの実と葉でできた冠を被り、左手にワインを持つ少年の目線は色恋を誘っているように見えます。少年の手前に置かれた果物や植物は、カラヴァッジョが得意とした表現です。

カラヴァッジョ『音楽家たち』

カラヴァッジョ『音楽家たち』1595-1596年メトロポリタン美術館

  • 作品名:音楽家たち
  • Title:The Musicians
  • 作者:カラヴァッジョ(カラヴァッジオ)
  • 制作年:1595-1596年
  • 種類:油彩、キャンバス
  • 寸法:92cm×118.5cm
  • 所有者:メトロポリタン美術館

カラヴァッジョ『音楽家たち』は、楽器を携え楽譜に目を通す少年たちが描かれた作品。カラヴァッジョは少年と果物・植物を組み合わせた絵画を多数制作していますが、本作は少年が複数人描かれている点が異なります。右から2人目の画面のこちら側を見つめている少年はカラヴァッジョの自画像という説もあります。

カラヴァッジョ『トランプ詐欺師』

カラヴァッジョ『トランプ詐欺師』1595年頃キンベル美術館

  • 作品名:トランプ詐欺師
  • Title:The Cardsharps
  • 作者:カラヴァッジョ(カラヴァッジオ)
  • 制作年:1595年頃
  • 種類:油彩、キャンバス
  • 寸法:90cm×112cm
  • 所有者:キンベル美術館(アメリカ)

カラヴァッジョ『トランプ詐欺師』は、1987年と比較的新しく発見されたカラヴァッジョの作品。当時はこうした主題の作品が制作される機会は少なく珍しかったと考えられます。手前と奥の男がグルになって青年を騙そうとしている場面が描かれています。

カラヴァッジョ『リュートを弾く若者』

カラヴァッジョ『リュートを弾く若者』1596年エルミタージュ美術館

  • 作品名:リュートを弾く若者
  • Title:Suonatore di liuto
  • 作者:カラヴァッジョ(カラヴァッジオ)
  • 制作年:1596年
  • 種類:油彩、キャンバス
  • 寸法:94cm×119cm
  • 所有者:エルミタージュ美術館

『リュートを弾く若者』は、カラヴァッジョがミラノにいたころに描いた作品。この頃のカラヴァッジョは、少年をモデルに、花や果物を添えた作品を多く制作しており、本作『リュートを弾く若者』は男性歌手ペドロ・モントーヤであると考えられています。若者の後ろには左から射し込む光が描かれており、カラヴァッジョらしさの片鱗が見えます。

カラヴァッジョ『リュートを弾く若者』

カラヴァッジョ『リュートを弾く若者』1596年ウィルデンスタイン・コレクション

  • 作品名:リュートを弾く若者
  • Title:The Lute Player
  • 作者:カラヴァッジョ(カラヴァッジオ)
  • 制作年:1596年
  • 種類:油彩、キャンバス
  • 寸法:100cm×126.5cm
  • 所有者:ウィルデンスタイン・コレクション

カラヴァッジョ『果物籠』

カラヴァッジョ『果物籠』1596年頃アンブロシアーナ絵画館

  • 作品名:果物籠
  • Title:Basket of Fruit
  • 作者:カラヴァッジョ(カラヴァッジオ)
  • 制作年:1596年頃
  • 種類:油彩、キャンバス
  • 寸法:31cm×47cm
  • 所有者:アンブロシアーナ絵画館(イタリア)

『果物籠』はカラヴァッジョの代表的な静物画。この時代に静物画を背景ではなく作品の主題とするのは珍しいことでした。籠から飛び出るように盛られた果物が遠近感を強調しています。

添えられた葉に青々したものと枯れてしなびたものが混じっているのは、カラヴァッジョなりの生と死の表現。静物を描く=寓意画(ヴァニタス)の流れを汲んでいたのかもしれません。

カラヴァッジョはこの後、精緻でリアルな静物画や人物画から、宗教画へと本格的にシフトしていきます。

カラヴァッジョ『法悦の聖フランチェスコ』

カラヴァッジョ『法悦の聖フランチェスコ』1596年頃ワーズワース美術館

  • 作品名:法悦の聖フランチェスコ
  • Title:Francis of Assisi in Ecstasy
  • 作者:カラヴァッジョ(カラヴァッジオ)
  • 制作年:1596年頃
  • 種類:油彩、キャンバス
  • 寸法:92.3cm×127.5cm
  • 所有者:ワーズワース美術館

カラヴァッジョ『法悦の聖フランチェスコ』は、イタリアの守護聖人・聖フランチェスコがラヴェルナの山中で天使と出会い、キリストと同じ聖痕を受け倒れこんでいる場面が描かれた作品。

倒れこんだ聖フランチェスコを天使が優しく抱き上げ介抱する様子は、カラヴァッジョの作品にしては珍しく優しい雰囲気に包まれています。カラヴァッジョは聖フランチェスコを主題にした作品を他にも何点か残しています。

カラヴァッジョ『ナルキッソス』

カラヴァッジョ『ナルキッソス』1597年頃ローマ国立美術館

『ナルキッソス』作品詳細・解説はこちら

『ナルキッソス』カラヴァッジョ作品の解説
『ナルキッソス』は、水に映る自分の美しい姿に酔いしれ溺れ死んだ美少年ナルキッソスをモデルにしたカラヴァッジョによる1597年頃の作品。現在はローマ国立美術館所蔵。NHK・Eテレで放送中のテレビ番組「びじゅチューン!」のモデル作品に取り上げられるなど日本でも広く知られている作品です。
  • 作品名:ナルキッソス
  • Title:Narcissus
  • 作者:カラヴァッジョ(カラヴァッジオ)
  • 制作年:1597年頃
  • 種類:油彩、キャンバス
  • 寸法:110cm×92cm
  • 所有者:国立古典絵画館

カラヴァッジョ『アレクサンドリアの聖カタリナ』

カラヴァッジョ『アレクサンドリアの聖カタリナ』1597年頃ティッセン=ボルネミッサ美術館

  • 作品名:アレクサンドリアの聖カタリナ
  • Title:Saint Catherine
  • 作者:カラヴァッジョ(カラヴァッジオ)
  • 制作年:1597年頃
  • 種類:油彩、キャンバス
  • 寸法:173cm×133cm
  • 所有者:ティッセン=ボルネミッサ美術館

カラヴァッジョ『アレクサンドリアの聖カタリナ』は、キリスト教の聖人である聖カタリナ(アレクサンドリアのカタリナ)が描かれた作品。

壊れた車輪や剣は聖カタリナを象徴するモティーフで、車に括られ引きずられる刑に処せられそうになったカタリナが車輪に触れると車輪は壊れてしまい、カタリナは剣によって斬首されました。

カラヴァッジョ『メデューサ』

カラヴァッジョ『メデューサ』1597-1598年ウフィツィ美術館

  • 作品名:メデューサ
  • Title:Medusa
  • 作者:カラヴァッジョ(カラヴァッジオ)
  • 制作年:1597-1598年
  • 種類:油彩、キャンバス
  • 寸法:60cm×55cm
  • 所有者:ウフィツィ美術館

カラヴァッジョ『メデューサ』は、見た者を石に変える力と蛇の髪を持つことで知られるギリシャ神話の怪物メドューサが、ペルセウスに斬首され、恐ろしい形相となった様子が描かれた作品。

メドューサは絵画のモティーフとして人気があり、ルーベンスも斬首されたメドューサをモデルにした作品を描いています。

カラヴァッジョ『女占い師』

カラヴァッジョ『女占い師』1598-1599年頃ルーヴル美術館

  • 作品名:女占い師
  • Title:The Fortune Teller
  • 作者:カラヴァッジョ(カラヴァッジオ)
  • 制作年:1598-1599年頃
  • 種類:油彩、キャンバス
  • 寸法:89cm×131cm
  • 所有者:ルーヴル美術館

日本ではあまり馴染みのない作品かもしれませんが、イタリアがリラを使っていた時代、100000リラ紙幣にカラヴァッジョの肖像画とともにデザインされていた絵画がこの『女占い師』でした。

リラ紙幣にデザインされたカラヴァッジョと女占い師

カラヴァッジョは『女占い師』という主題で2作品を残していますが、紙幣のデザインに採用されたのは、顔の向きや指の仕草などから見て、こちらのルーヴル美術館所蔵作品のほうだと思われます。

カラヴァッジョ『マグダラのマリアの回心』

カラヴァッジョ『聖マタイとマグダラのマリア』1598年デトロイト美術館

  • 作品名:マグダラのマリアの回心
  • Title:Martha and Mary Magdalene
  • 作者:カラヴァッジョ(カラヴァッジオ)
  • 制作年:1598年
  • 種類:油彩、キャンバス
  • 寸法:100cm×134.5cm
  • 所有者:デトロイト美術館

カラヴァッジョ『ホロフェルネスの首を斬るユディト』

カラヴァッジョ『ホロフェルネスの首を斬るユディト』1598-1599年国立古典絵画館(ローマ)

『ホロフェルネスの首を斬るユディト』作品詳細・解説はこちら

『ホロフェルネスの首を斬るユディト』カラヴァッジョ作品の解説
『ホロフェルネスの首を斬るユディト』は旧約聖書外典ユディト記の一場面を描いた作品。初期バロック美術の巨匠・カラヴァッジョが1598-1599年頃に制作した油彩画で現在はローマにある国立古典絵画館所蔵。暗闇にホロフェルネスの上半身とユディトだけが浮かび上がるカラヴァッジョの巧みな光の使い方が見事な作品です。
  • 作品名:ホロフェルネスの首を斬るユディト
  • Title:Judith beheading Holofernes
  • 作者:カラヴァッジョ(カラヴァッジオ)
  • 制作年:1598-1599年
  • 種類:油彩、キャンバス
  • 寸法:145cm×195cm
  • 所有者:国立古典絵画館(ローマ)

カラヴァッジョ『ダヴィデとゴリアテ』

カラヴァッジョ『ダヴィデとゴリアテ』1599年プラド美術館

  • 作品名:ダヴィデとゴリアテ
  • Title:David and Goliath
  • 作者:カラヴァッジョ(カラヴァッジオ)
  • 制作年:1599年
  • 種類:油彩、キャンバス
  • 寸法:110cm×91cm
  • 所有者:プラド美術館
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