音楽の稽古
作品解説
『音楽の稽古』は窓から差し込む光の中で楽器の練習をする女性と指導者が描かれたヨハネス・フェルメールの風俗画。
1662年~1664年頃に制作された油彩画で、フェルメールのパトロンだったピーテル・クラースゾーン・ファン・ライフェンが所有していた絵画コレクションのひとつです。現在はイギリス王室ロイヤル・コレクションが所有し、ロンドンのセントジェームズ宮殿に所蔵されています。
鑑賞のポイント
女性が練習しているのはヴァージナルというチェンバロの一種の鍵盤楽器。フェルメールの作品では『ヴァージナルの前に立つ女』『ヴァージナルの前に座る女』『ヴァージナルの前に座る若い女』などでも見ることができます。
『音楽の稽古』に描かれているヴァージナルはルッカース製のもので、蓋には「音楽は喜びの伴侶、悲しみの薬」という意味のラテン語が記されています。
壁に掛かった鏡には、ヴァージナルを演奏する女性の表情が鏡に映っています。同じように鏡やガラスに登場人物の表情を映したフェルメール作品に、『窓辺で手紙を読む女』があります。
音楽教師はヴァージナルを演奏する女性の手元ではなく女性の表情を見つめています。X線検査によって元は女性の体も男性のほうを向いていたことが判明しており、二人は恋愛関係であると考えられます。
男女の手前に置かれたテーブルにはオリエンタル柄のタペストリーが敷かれ、男女の恋愛・誘惑を暗示するワイン入れが置かれています。空いた椅子は不在の人間を指すことから、男女どちらかには配偶者がいるのかもしれません。
キャンバスの下1/3ほどを占めるのは、ウルトラマリンブルーが用いられた美しいフェルメールブルーの床と、ずっしりとした重厚感のあるレッド&フェルメールブルーのタペストリー。この構図には奥行き感を強調し全体を引き締める効果があります。
画面の下部を濃い色で引き締め、窓から差し込む光でクリーム色のヴァージナルと女性の衣服を優しく浮かび上がらせる構図は、光の魔術師と呼ばれるフェルメールの本領発揮といったところでしょうか。
基本情報
フェルメール展・開催中
2018年秋より東京・上野にてフェルメール展開催中、2019年2月からは大阪に巡回予定です。フェルメール展の展示作品や混雑状況、チケットの購入方法など別記事にまとめましたので、お出かけの参考になさってください。
●フェルメール展
上野の森美術館 2018年10月5日~2019年2月3日
大阪市立美術館 2019年2月16日~2019年5月12日
ヨハネス・フェルメールとは
フェルメールの生涯・作品・鑑賞ポイント
ヨハネス・フェルメールは、光の魔術師とも呼ばれるバロック美術の巨匠です。柔らかな光の溢れる油彩画を得意とし、代表作に『真珠の耳飾りの少女』『牛乳を注ぐ女』『デルフトの眺望』などがあります。フェルメールは現存する作品が大変少なく、寡作の画家としても知られます。
YouTube動画 フェルメール全作品集
ヨハネス・フェルメールの全作品を4分にまとめた動画をYouTubeにアップしました。動画は今後も画家別に作っていく予定です。よろしければチャンネル登録をお願いいたします。