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北方ルネサンス

ルーカス・クラーナハ(クラナッハ)

投稿日:2018年9月5日 更新日:

ルーカス・クラーナハ(クラナッハ)ってこんな人

ルーカス・クラーナハ Lucas Cranach

クラーナハ自画像デューラーと同時期に活躍したクラーナハは、北方ルネサンスの画家のなかでもデューラーと並ぶドイツの巨匠といわれ、ヴィーナスなどの官能的でしなやかな裸婦画はコレクターの間でも大変な人気を集めました。

ドイツの待ちクローナハに生まれたクラーナハは、画家であった父の工房で26歳まで修行し、その後ウィーンに上京するとウィーン大学の知識人たちと交流を深めます。33歳でザクセン選帝侯の宮廷画家になるとザクセンの首都ヴィッテンベルクに移住。ヴィッテンベルクを訪れたルターと友人になったクラーナハは、ルターのプロバガンダに協力します。

プロテスタントに協力する一方でカトリックの顧客も抱えていたクラーナハは、プロテスタントとカトリックの分裂に上手い具合に乗っかり、弟子を大勢抱える大工房の親方となって宗教画や神話画を数多く手がけました。

ルーカス・クラーナハが活躍した北方ルネサンスとは

ローマから見て北側、アルプスより以北のイタリア以外のヨーロッパで始まった美術が北方ルネサンスです。ネーデルラント、ドイツ、フランスなどヨーロッパの国々とルネサンス運動が盛んだったイタリアとの交流が進み、イタリアに芸術家たちが自国にイタリアルネサンス美術のエッセンスを持ち帰ったことも、北方ルネサンスに多大な影響を与えました。油絵具を使い始めた北方ルネサンスの芸術家たちの作品は緻密な表現力が特徴です。

ルーカス・クラーナハはドイツで活躍した画家です。

ルーカス・クラーナハのここがすごい

ロマンティックで官能的な女性像を確立

宗教画や神話画を多く手がけたクラーナハはアダムとイヴやヴィーナスなどの裸婦画も手がけました。クラーナハの描く女性は小顔で妖しく冷たい瞳を持ち、またその身体のフォルムは細身で胸も腰も細く、全裸にアクセサリーや帽子だけといった官能的でロマンティシズム溢れるもの。クラーナハ独特の魅惑的な女性美は当時大変な人気を博しました。

芸術家と実業家を両立して大成功

工房に多くの弟子を抱えることで大量の注文を引き受けることができたクラーナハは、工房の作品に自分の紋章である蛇のマークを描きこみブランド化。同時に薬屋や印刷業の開業など画家以外の業種にも進出、ルター訳の聖書も出版するなど実業家としても成功します。宗教改革の嵐が吹き荒れるなかでもプロテスタントとカトリック両方の顧客をさばいた立ち回り上手なクラーナハは、実業家としての素養も持ち合わせていたのでした。

ルーカス・クラーナハ(クラナッハ)の作品・代表作

クラーナハ『エジプトへの逃避途上の休息』

クラーナハ『エジプトへの逃避途上の休息』クラーナハ『エジプトへの逃避途上の休息』は、イエスを守るためにイスラエルからエジプトへ逃げてきた聖母マリアら聖家族が隠れて休息する様子を表した油彩画。多くの芸術家が主題にしている宗教画を、クラーナハはウィーンに上京した際に見たドナウ湖畔の美しい風景と聖家族や天使を組み合わせた作品に仕上げました。

作品名:『エジプトへの逃避途上の休息』
作者:ルーカス・クラーナハ
製作年:1504年
種類:板、油彩
寸法:70.7cm×53cm
所有者:ベルリン美術館(ドイツ)

クラーナハ『マルティン・ルターの肖像』

クラーナハ『マルティン・ルターの肖像』クラーナハ『マルティン・ルターの肖像』は、『九十五カ条の論題』で有名なルターの肖像画です。

宗教改革者マルティン・ルターの友人であり、結婚式の立会人を努めるほど親しい間柄であったクラーナハは、ルターの考えを普及するのにも一役買いました。クラーナハはルターの肖像画を複数回描いたほか、彼の家族の肖像画も描きました。

作品名:マルティン・ルターの肖像
作者:ルーカス・クラーナハ
製作年:1529年
種類:板、油彩
寸法:73cm×54cm
所有者:ウフィッツィ美術館(イタリア・フィレンツェ)

クラーナハ『ユディト』

クラーナハ『ユディト』クラーナハ『ユディト』は旧約聖書ユディト記に登場する女性ユディトが将軍ホロフェルネスの首を切り落とした場面を描いた油彩画。

美しいユディトの姿に油断し酔いつぶれた将軍ホロフェルネスの首を将軍の剣で切り落とし、自分が住む町ベトリアを守った未亡人ユディト。ユディトの冷たくも見える視線や薄い唇は勝利のため静かに微笑んでおり、ユディトの繊細な細工が施された衣装と、ホロフェルネスの首の断面やうつろな目の生々しさの対比が見事な作品です。

作品名:ユディト
作者:ルーカス・クラーナハ
製作年:1530年
種類:板、油彩
寸法:86cm×59cm
所有者:ウィーン美術史美術館

クラーナハ『三美神』

クラーナハ『三美神』クラーナハ『三美神』は、神話に登場する3人の女神が、裸に帽子とアクセサリー、身体が透ける薄い布をまとった姿で描かれた油彩画。これまで個人蔵の作品だったものをルーヴルが寄付金を集めて買い取ったことでも話題になりました。

作品名:三美神
作者:ルーカス・クラーナハ
製作年:1531年
種類:板、油彩
寸法:36cm×24cm
所有者:ルーヴル美術館(フランス)

クラーナハ『ヴィーナス』

クラーナハ『ヴィーナス』クラーナハ『ヴィーナス』は、挑発的にも思える冷たい吊り目とクラーナハらしい独特のプロポーションを持つヴィーナスがモデルの油彩画。薄い布は身体を隠す役割を果たしておらず、官能的な雰囲気が漂う作品です。

2016年の国立西洋美術館クラーナハ展に来日しました。

作品名:ヴィーナス
作者:ルーカス・クラーナハ
製作年:1532年
種類:板、油彩
寸法:37cm×24cm
所有者:シュテーデル美術館(ドイツ)

クラーナハ『正義のアレゴリー(正義の寓意)』

クラーナハ『正義のアレゴリー(正義の寓意)』クラーナハ『正義のアレゴリー(正義の寓意)』は、ローマ神話の正義の女神ユスティティアがモデルの油彩画。正義の女神ユスティティアは両手に天秤と剣を持ち、ごくごく薄い衣をまとっています。女神ユスティティアが裸婦で表現されたのはクラーナハのこの作品が初めてです。

現在この作品は個人蔵となっていますが、2016年の国立西洋美術館クラーナハ展に来日しました。

作品名:正義のアレゴリー(正義の寓意)
作者:ルーカス・クラーナハ
製作年:1537年
種類:板、油彩
寸法:72cm×49.6cm
所有者:個人蔵

北方ルネサンスの代表的な芸術家リスト

-北方ルネサンス

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