初期ルネサンスの彫刻
初期ルネサンスの彫刻の特徴
初期ルネサンスの絵画同様、ギリシャ美術やローマ美術をお手本とし、神話を題材とした作品が多く見られ、またその姿には独立像が多く見られます。
宗教美術では人間の表情を生かした表現が許された時代ということで優しげな微笑をたたえたマリアと赤ちゃんをテーマにした彫刻が好まれ、また宗教彫刻以外では裸体表現、コントラポストに基づいた古代彫刻の均整の取れたプロポーションの彫刻、古典を真似するだけでなく、より写実性で人間らしい彫刻が数多く生まれました。
初期ルネサンスの芸術家たち
初期ルネサンスの代表的な彫刻家ドナテッロは別ページにまとめました。初期ルネサンスの概要と作品、初期ルネサンスの画家であるボッティチェリ、フラ・アンジェリコ、マザッチオ、マンテーニャの作品はそれぞれ画家別ににまとめました。
ポライウォーロ『ヘラクレスとアンタイオス』
ポライウォーロ『ヘラクレスとアンタイオス』はヘラクレスが巨神アンタイオスを持ち上げている場面を現した彫刻。アンタイオスは地面に足をつけていると力を発揮してしまうため、地面から持ち上げることでアンタイオスの力を奪おうというヘラクレスの作戦で、この後ヘラクレスはアンタイオスに勝利します。
この彫刻の作者ポライウォーロは弟と工房を営み、彫刻だけでなく絵画でも才能を発揮しました。
作者:ポライウォーロ(アントニオ・ポライウォーロ)
制作年:1465-1475年
所有者:バルジェロ国立美術館(イタリア・フィレンツェ)
ルカ・デッラ・ロッビア『聖母子像』
ルカ・デッラ・ロッビア『聖母子像』
彫刻に甘美なスタイルを取り入れたルカ・デラ・ロッビアが作り上げた聖母子像は釉薬をかけたテラコッタ製です。
作者:ルカ・デッラ・ロッビア
制作年:1446-1449年
所有者:Museo degli Innocenti(捨て子養育院美術館)
ギベルティ『ヤコブとエサウ(天国の門)』
ギベルティ『ヤコブとエサウ(天国の門)』は、サンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂付属の洗礼堂の扉。
東側の扉の浮き彫り(1452年完成)が有名、後にミケランジェロが「天国への門」と呼んで賞賛したことからこの名で呼ばれる。現在洗礼堂に設置されている扉はレプリカ、本物はドゥオーモ付属博物館所蔵。
これはまず1つのパーツ『イサクの犠牲』の制作、所謂コンペによりブルネレスキらより認められ、勝ち取った仕事であり、ギベルティの技術力だけでなく、1つの鋳型を使って制作することにより材料コストを下げるという経済的なプレゼンテーション力の影響も大きかったといえるでしょう。
作者:ギベルティ(ロレンツォ・ギベルティ)
所在地:ドゥオーモ付属博物館所蔵、サン・ジョヴァンニ洗礼堂(イタリア・フィレンツェ)
初期ルネサンス建築
初期ルネサンス建築の特徴
初期ルネサンスの絵画や彫刻と同様にギリシャ美術やローマ美術など古典を理想とした建築様式。数学的な比例や工学的な観点から建築を捉え建築家として活躍したブルネッレスキの『サンタ=マリア=デル=フィオーレ大聖堂円蓋』や、建築論で知られるアルベルティの『サンタ・マリア・ノヴェッラ教会』などは初期ルネサンス建築の代表と言えます。
アルベルティ『サンタ・マリア・ノヴェッラ教会』
アルベルティ『サンタ・マリア・ノヴェッラ教会』
アルベルティによって大きな中央扉、エンタブラチュア、ファサード上部の意匠が考案され、白色と緑色の大理石に飾られた美しいファサードが1470年に完成しました。
1565年から1571年に開催されたトレント公会議以降、教会はジョルジョ・ヴァザーリの指揮下で改装されています。
作者のアルベルティは『絵画論』『彫刻論』『建築論』の著者としても知られています。
作者:アルベルティ(レオン・バッティスタ・アルベルティ)、ヴァザーリ(ジョルジョ・ヴァザーリ)
所在地:イタリア・フィレンツェ
ブルネッレスキ『サンタ=マリア=デル=フィオーレ大聖堂円蓋』
ブルネッレスキ『サンタ=マリア=デル=フィオーレ大聖堂円蓋』
フィレンツェ大聖堂円蓋とも。八角形の胴部の上に木枠を使わずに煉瓦を積み上げて製作された円蓋で、イタリアにおける晩期ゴシック建築および初期ルネサンス建築の代表的な建造物です。
ブルネッレスキは初めて建築家という職業を認識させた人物でもあり、ドナテッロとともに古代遺跡を研究するなどして建築への知識を深め、フィレンツェ大聖堂のドームを手がけました。
作者:ブルネッレスキ(フィリッポ・ブルネレスキ)
製作年:1421-1436年
所在地:イタリア・フィレンツェ