眠る女
作品解説
『眠る女』は、頬杖をついて眠る女性を描いたヨハネス・フェルメールの風俗画。1657年頃に制作された油彩画で、元は個人所蔵の作品でしたが、1913年にアメリカのメトロポリタン美術館に寄贈されています。
柔らかい光が溢れる作品を得意とするフェルメールですが、『眠る女』は薄暗い部屋が舞台となっています。X線による検査では部屋の向こう側に描かれていた犬と男性が塗りつぶされていることがわかっており、登場人物が女性一人に絞られたことで、薄暗い部屋のなかでも女性一人にスポットを当てることに成功しています。
鑑賞のポイント
酔って眠り込んでいる女性が誰なのかについては諸説あり、以前は「この家で働いている使用人の女性が疲れて眠り込んでいる」とする説が有力でしたが、眠っている女性の着ている服が上品であり上質に見えること、耳に大ぶりな耳飾り、胸元にはネックレスらしきもアクセサリーを付けていることなどから、現在は「モデルは使用人ではなく、この家の若妻」という説が有力です。
頬杖をつく姿勢にはメランコリー(憂鬱)の意味があるので、この女性は酒を飲んで居眠りをする怠惰な女性、もしくは壁に仮面を踏むキューピッドの絵が掛けられていることから失恋や恋愛感情のもつれでヤケ酒を煽って眠っている女性のようです。
オリエンタルな雰囲気のタペストリーがかけられたテーブルの上には、ほとんど空になったグラス、ワイン入れ、果物が置かれています。酒や果物は性の象徴であり、性への堕落の寓意でもあります。この『眠る女』は、酒に溺れ、性的に堕落した若妻、もしくは怠惰な生活に堕落した若妻と見ることができるでしょう。右手前の椅子の背もたれにはライオンの彫刻が付いている様子。このライオンの彫刻が付いた椅子は、裕福な暮らしをする家庭の象徴なのか、フェルメールの作品に度々登場するモティーフです。フェルメールは自分の家にある物を作品に登場させることが多いので、この彫刻もフェルメールの自宅にあった物なのかもしれません。
基本情報
フェルメール展・開催中
2018年秋より東京・上野にてフェルメール展開催中、2019年2月からは大阪に巡回予定です。フェルメール展の展示作品や混雑状況、チケットの購入方法など別記事にまとめましたので、お出かけの参考になさってください。
●フェルメール展
上野の森美術館 2018年10月5日~2019年2月3日
大阪市立美術館 2019年2月16日~2019年5月12日
ヨハネス・フェルメールとは
フェルメールの生涯・作品・鑑賞ポイント
ヨハネス・フェルメールは、光の魔術師とも呼ばれるバロック美術の巨匠です。柔らかな光の溢れる油彩画を得意とし、代表作に『真珠の耳飾りの少女』『牛乳を注ぐ女』『デルフトの眺望』などがあります。フェルメールは現存する作品が大変少なく、寡作の画家としても知られます。
YouTube動画 フェルメール全作品集
ヨハネス・フェルメールの全作品を4分にまとめた動画をYouTubeにアップしました。動画は今後も画家別に作っていく予定です。よろしければチャンネル登録をお願いいたします。