マリアとマルタの家のキリスト
作品解説
『マリアとマルタの家のキリスト』は、ルカ福音書の有名なエピソードが描かれたヨハネス・フェルメールによる宗教画。フェルメール作品としては最大の作品サイズです。フェルメールが20代前半の頃、1654年~1655年頃に描いた作品とされており、現在はスコットランド国立美術館に所蔵されています。
フェルメールは風俗画で知られていますが、初期にはこのような宗教画も描いていました。寡作なフェルメールの宗教画は、この『マリアとマルタの家のキリスト』と『聖プラクセディス』の2点のみとなっています。
この『マリアとマルタの家のキリスト』では、キリストと目線を合せているのが姉マルタ、頬杖をついてキリストの話を聞いているのが妹マリア。キリストが姉妹の家を訪れると、姉マルタはもてなしのために忙しく働き、妹マリアはキリストの足元に座り込みキリストの話を聞き始めます。忙しく働く姉マルタは、キリストに働かない妹マリアをたしなめるよう頼みますが、キリストは「マリアは良いほう(神の話を聞くこと)を選んだ」と妹マリアを褒め、姉マルタを諭すというエピソードです。
鑑賞のポイント
柔らかい光の表現にこだわっていたことで知られるフェルメール。初期のこの作品『マリアとマルタの家のキリスト』では、まだそのこだわりは控えめではありますが、キリストの顔や手には影を入れず姉妹の顔は影で暗くし、テーブルクロスを真っ白に表現するなど、明暗の表現によって見る者の目線をキリスト周辺に集中させる効果を狙っていることが分かります。明るく描かれたキリストの手は大きく肉厚で、キリストの包容力を表しているかのようです。
基本情報
フェルメール展・開催中
『マリアとマルタの家のキリスト』は2018年秋スタートのフェルメール展に展示されます。フェルメール展の展示作品や混雑状況、チケットの購入方法など別記事にまとめましたので、お出かけの参考になさってください。
●フェルメール展
上野の森美術館 2018年10月5日~2019年2月3日
大阪市立美術館 2019年2月16日~2019年5月12日
ヨハネス・フェルメールとは
フェルメールの生涯・作品・鑑賞ポイント
ヨハネス・フェルメールは、光の魔術師とも呼ばれるバロック美術の巨匠です。柔らかな光の溢れる油彩画を得意とし、代表作に『真珠の耳飾りの少女』『牛乳を注ぐ女』『デルフトの眺望』などがあります。フェルメールは現存する作品が大変少なく、寡作の画家としても知られます。
YouTube動画 フェルメール全作品集
ヨハネス・フェルメールの全作品を4分にまとめた動画をYouTubeにアップしました。動画は今後も画家別に作っていく予定です。よろしければチャンネル登録をお願いいたします。