聖プラクセディス
作品解説
『聖プラクセディス』は、オランダ・バロックの巨匠ヨハネス・フェルメールが最初期に手がけたとされる宗教画。正確な制作年は分かっていませんが、1655年頃に描かれた油彩画です。
2014年にロンドンで行われたオークションに出品された『聖プラクセディス』は、日本人によって落札され、国立西洋美術館に寄託されることとなりました。現在は国立西洋美術館の常設展示室にて一般に開放されています。
フェルメール作の宗教画は2点のみ
この作品のモデルはキリスト教の聖人プラクセディス。聖プラクセディスは殉教者の遺体を清めたとされる聖人です。
プラクセディスが金銀の装飾が施された杯に殉教者の血を絞り入れている様子は、 フェリーチェ・フィチェレッリの作品の模写とされています。現存するフェルメール作品のなかで、別の画家の模写とされる作品はこの『聖プラクセディス』のみです。
また、フェルメール作とされる宗教画は『聖プラクセディス』と『マリアとマルタの家のキリスト』の2点のみ。フェルメールは初期に数点の宗教画や神話画を描き、その後は風俗画や風景画へと方向転換していきました。
聖プラクセディスはフェルメールの作品か
『聖プラクセディス』がフェルメールの作品かどうかは、フェルメールを専門に研究している専門家のあいだでも真贋の討論が続いており、現在でもフェルメール作であるとは断定されていません。
『聖プラクセディス』を寄託された国立西洋美術館でも、この作品については「フェルメールに帰属」としています。
鑑賞のポイント
イタリア人画家フェリーチェ・フィチェレッリの模写と言われるフェルメール作『聖プラクセディス』。フィチェレッリ作品との違いは、フェルメール作の聖プラクセディスが殉教者の血を吸った海綿と一緒に黄金の十字架を握っているところです。聖プラクセディスの後ろには首を落とされたキリスト教の信者が倒れており、聖プラクセディスはその殉教者の遺体の血を一端海綿に吸わせた後、十字架に触れさせるかのようにして杯に流し入れています。
フェルメールは結婚の際にオランダで主流であったプロテスタントからカトリックに改宗したとも言われており、この『聖プラクセディス』を模写した理由には、フェルメールの個人的な背景が関係していたのかもしれません。
聖プラクセディスの右後ろに見える小さな女性の姿は、プラクセディスの姉妹である守護聖女プデンティアナであるといわれています。
『聖プラクセディス』はフェルメールとしては初期の作品で、しかも模写ということもあり、光を自由自在に操るフェルメールらしい奥行き感はまだ感じられませんが、プラクセディスの服のひだや顔にかかる光の表現はフェルメールの片鱗が見えているようにも思います。
基本情報
フェルメール展
●フェルメール展
上野の森美術館 2018年10月5日~2019年2月3日
大阪市立美術館 2019年2月16日~2019年5月12日
ヨハネス・フェルメールとは
フェルメールの生涯・作品・鑑賞ポイント
ヨハネス・フェルメールは、光の魔術師とも呼ばれるバロック美術の巨匠です。柔らかな光の溢れる油彩画を得意とし、代表作に『真珠の耳飾りの少女』『牛乳を注ぐ女』『デルフトの眺望』などがあります。フェルメールは現存する作品が大変少なく、寡作の画家としても知られます。
YouTube動画 フェルメール全作品集
ヨハネス・フェルメールの全作品を4分にまとめた動画をYouTubeにアップしました。動画は今後も画家別に作っていく予定です。よろしければチャンネル登録をお願いいたします。