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『デルフトの眺望』ヨハネス・フェルメールの作品解説

デルフトの眺望

作品解説

ヨハネス・フェルメール『デルフトの眺望』ヨハネス・フェルメールの生涯と全作品はこちら

デルフトの眺望』は、オランダ・デルフトの川辺と街並みが描かれたヨハネス・フェルメールによる風景画。1660年~1661年頃に制作された油彩画で、現在はオランダのマウリッツハイス美術館に所蔵されています。

フェルメールが生涯暮らした街デルフト

オランダ・デルフトはフェルメールが生涯暮らした街です。

写真で撮影したかのようなアングルで、川の対岸であるスヒー港からデルフトの街並みを眺望した様子が描かれており、川の向こうにデルフトの街が広がります。

デルフトの街並みの右側には1632年にフェルメールが洗礼を受けた新教会の白い塔、左側にはフェルメールが埋葬された旧教会の塔が見えます。建物の時計の針は7時10分を指しており、7時過ぎでこの明るさということから、初夏または夏の朝であろうと推測されます。

きっかけはデルフトを襲った悲劇

1654年10月12日、オランダ・デルフトにあった軍の火薬庫で40トンもの火薬が爆発。街の4分の1が吹き飛ぶ大事故となり、死傷者は1,000人にも及びました。この爆発事故でフェルメールの師匠ともいえる画家カレル・ファブリティウスも亡くなっています。

『デルフトの眺望』が描かれたのはこの火薬庫爆発から約6年後。フェルメールは、事故に巻き込まれることを免れた街並みを描くことで、デルフトの風景を後世に残そうと考えたのかもしれません。カレル・ファブリティウスをはじめとする死者への追悼とも考えられます。

絶賛されたデルフトの眺望

寡作の画家だったフェルメールの風景画は、この『デルフトの眺望』と『小路』の2点のみ。小説家のマルセル・プルーストは『デルフトの眺望』を鑑賞し「世界で一番美しい絵を見た」という感想を残しており、ポスト印象派の巨匠ゴッホもマウリッツハイス美術館でこの作品を鑑賞した際に驚嘆したといわれます。

フェルメールのパトロンの死後に、パトロンのフェルメールコレクションがオークションに出品された際は、この『デルフトの眺望』の人気が最も高かったそう。1822年、アムステルダムのオークションでマウリッツハイス美術館に買い取られた『デルフトの眺望』は、1866年にフランスの評論家トレ・ビュルガーの絶賛を受け、フェルメールの才能に再び注目が集まるようになりました。

鑑賞のポイント

フェルメール『デルフトの眺望』ウェットインウェットで描かれた川辺フェルメールはこの『デルフトの眺望』に様々な技法を施しています。

画面を横切るように流れる川は、先にキャンバスに白を塗り、そのあとに油で透明感が出るほど薄めた青を何層も塗り重ねることで水の揺らぎを表現。この技法はグレーズ法と呼ばれ、『真珠の耳飾りの少女』のターバンにも用いられています。

また、建物の壁面や、川辺に泊まるニシン漁の漁船には、顔料が乾かないうちに更に顔料を塗り重ねるウェットインウェット技法が用いられています。

漁船は砂を混ぜた顔料で塗られたと考えられてきましたが、現在は顔料の劣化により成分が分離したことで砂のような粒が浮き出てきたのではないかという説が有力です。

フェルメール『デルフトの眺望』計算された人の配置朝の川辺に数人の人が見えます。左側は船を待つ人々、右側にはおしゃべりをする婦人が2人。黄色と濃紺の服に白い頭巾姿の女性は牛乳を注ぐ女を思わせます。彼女が朝の買い物に出かけた際の姿を想定して描いたのかもしれません。

X線検査により、右端で話し込んでいる女性の横にもう一人別の男性がいたことが分かっていますが、完成時には塗りつぶされました。男性を一人消すことで画面の配置がすっきりとバランスよくまとまっています。

フェルメール『デルフトの眺望』川の向こう岸と描き分けられた雲

『デルフトの眺望』の空を見上げてみると、川の手前は曇り空、川の向こう側は晴れて日が射しています。光の魔術師とも呼ばれるフェルメールは、雲の様子を描き分け、雲の切れ間から射した光を街の右側だけに当てることで、画面の奥行きを強調し、デルフトの建物をより際立たせました

基本情報

作品名:デルフトの眺望
Title:View on Delft
Artist:Johannes Vermeer
制作年:1660-1661年頃
種類:キャンバス、油彩
寸法:96.5cm×115.7cm
所有者:マウリッツハイス美術館(オランダ)

フェルメール展・開催中

2018年秋より東京・上野にてフェルメール展開催中、2019年2月からは大阪に巡回予定です。フェルメール展の展示作品や混雑状況、チケットの購入方法など別記事にまとめましたので、お出かけの参考になさってください。

フェルメール展
上野の森美術館 2018年10月5日~2019年2月3日
大阪市立美術館 2019年2月16日~2019年5月12日

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ヨハネス・フェルメールとは

フェルメールの生涯・作品・鑑賞ポイント

ヨハネス・フェルメールは、光の魔術師とも呼ばれるバロック美術の巨匠です。柔らかな光の溢れる油彩画を得意とし、代表作に『真珠の耳飾りの少女』『牛乳を注ぐ女』『デルフトの眺望(本作品)』などがあります。フェルメールは現存する作品が大変少なく、寡作の画家としても知られます。

ヨハネス・フェルメールの生涯と代表作・全作品一覧
ヨハネス・フェルメールは名画『真珠の耳飾りの少女』『牛乳を注ぐ女』などの代表作があるバロック期のオランダ人画家です。現存する絵画30数点という寡作の画家でも知られるフェルメールの生涯や絵画技法、全作品を一挙紹介。柔らかい光に包まれた市民の日常を淡々と描き出すフェルメール作品の鑑賞ポイントもわかりやすく解説します。

YouTube動画 フェルメール全作品集

ヨハネス・フェルメールの全作品を4分にまとめた動画をYouTubeにアップしました。動画は今後も画家別に作っていく予定です。よろしければチャンネル登録をお願いいたします。

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