- アルブレヒト・デューラーとは? 画家プロフィール
- アルブレヒト・デューラーの作品の特徴・鑑賞ポイント
- アルブレヒト・デューラーの代表作・主要作品解説
アルブレヒト・デューラーとは? 画家プロフィール
北方ルネサンスの画家 アルブレヒト・デューラー Albrecht Durer
アルブレヒト・デューラーはドイツのニュルンベルク生まれの北方ルネサンスの画家です。
木版画・銅版画のほか、絵画、測定法教本などの執筆まで幅広く才能を発揮したデューラーは、自画像の発表、自作品へのサイン(モノグラムによる署名)、自分の作品を模倣した芸術家との著作権裁判など、今では当たり前になっていることを皆に先駆けて行った芸術家でした。
デューラーの代表作に木版画の連作『ヨハネ黙示録』『自画像』『四人の使徒』などがあります。
アルブレヒト・デューラーの生涯
金細工師の父親のもとで修行したデューラーは、15歳でニュルンベルクの画家ミヒャエル・ヴォルゲムートに3年間弟子入りしました。イタリアに2度訪問し、ルネサンス美術の理念、版画や印刷の技法、人体のバランスやプロポーション、遠近法、鮮やかな色彩などを学びます。イタリア・ルネサンスがデューラーに与えた影響は大きく、2度目にイタリアに訪問した際にはヴェネツィアで祭壇画の制作も行いました。
デューラーが活躍した北方ルネサンスとは
ローマから見て北側、アルプスより以北のイタリア以外のヨーロッパで始まった美術が北方ルネサンスです。ネーデルラント、ドイツ、フランスなどヨーロッパの国々とルネサンス運動が盛んだったイタリアとの交流が進み、イタリアに芸術家たちが自国にイタリアルネサンス美術のエッセンスを持ち帰ったことも、北方ルネサンスに多大な影響を与えました。油絵具を使い始めた北方ルネサンスの芸術家たちの作品は緻密な表現力が特徴です。
アルブレヒト・デューラーは、北方ルネサンスのなかでもドイツで活躍した画家・版画家です。
アルブレヒト・デューラーの作品の特徴・鑑賞ポイント
版画の芸術地位を押し上げたデューラー・ヨハネの黙示録
27歳で自費出版した木版画の連作『ヨハネ黙示録』は、当時の終末思想とマッチしたこともあり大ヒット。絵画と異なり大量に制作できる版画は多くの人の目に触れることになり、デューラーの版画はドイツ国内にとどまらず広く普及していきます。
『ヨハネ黙示録』のヒットは、デューラーの名を広めると同時に、芸術のなかでの版画の地位を押し上げることにも一役買いました。
芸術家であるデューラー自身の肖像画を発表
28歳のときには自らをキリストになぞらえた肖像画を制作しました。
当時は画家が自分の肖像画を描くことは大変珍しく、ボッティチェリらのように絵画のなかに自分の姿を紛れ込ませることはあっても、デューラーのように自らを主役にした作品を制作することはありませんでした。
イタリアの「神のごとき」がミケランジェロなら、ドイツの神はデューラーといったところでしょうか。ドイツ史上最大の画家ともいわれるデューラーは、自分自身を「神のごときと呼ばれるにふさわしい芸術家だ」と思っていたのかもしれません。
アルブレヒト・デューラーの代表作・主要作品解説
アルブレヒト・デューラー『1500年の自画像』
作品名:1500年の自画像
作者:アルブレヒト・デューラー
制作年:1500年
種類:板、油彩
寸法:67.1㎝×48.9㎝
所有者:アルテ・ピナコテーク(ドイツ)
ジャンル:肖像画
キーワード:画家の自画像
デューラー『1500年の自画像』作品解説
デューラー『1500年の自画像』は、芸術家デューラー自らをキリストになぞらえた肖像画。
正面を向き左右対称な構図は宗教画に多く、正面を向いた澄んだ瞳や繊細な指先はデューラーが芸術家として相当な自信家だったことを表しているようです。
NHK・Eテレの美術番組びじゅチューン!『1500年のオーディション』ではソバージュをなびかせてエキストラのオーディションを受けるデューラーを見ることができます。
アルブレヒト・デューラー『1489年の自画像』
作品名:1489年の自画像
作者:アルブレヒト・デューラー
制作年:1489年
種類:板、油彩
寸法:52㎝×41㎝
所有者:プラド美術館(スペイン)
ジャンル:肖像画
キーワード:画家の自画像
デューラー『1489年の自画像』作品解説
デューラー『1489年の自画像』は、画家自らの肖像画という当時としては珍しい作品。目線をこちらに向けたポーズからはデューラーの自意識の高さ、柔らかくカールした髪の質感や遠くに見える背景などからは技術の高さが伺えます。
アルブレヒト・デューラー『黙示録の四騎士(ヨハネの黙示録)』
作品名:黙示録の四騎士(ヨハネの黙示録)
作者:アルブレヒト・デューラー
制作年:1497-1498年
種類:木版
寸法:39㎝×28㎝
所有者:カールスルーエ州立美術館(ドイツ)
ジャンル:宗教画(歴史画)
キーワード:
デューラー『黙示録の四騎士(ヨハネの黙示録)』作品解説
デューラー『黙示録の四騎士(ヨハネの黙示録)』は、デューラーが自費出版した16枚の木版画(表紙込)からなる版画集の作品。聖書の黙示録をダイナミックに描き出したこの作品は大ヒットとなり、ドイツ以外の国にもデューラーの名が広まりました。
アルブレヒト・デューラー『野うさぎ』
作品名:野うさぎ A Young Hare
作者:アルブレヒト・デューラー
制作年:1502年
種類:紙、水彩
寸法:25cm×22.5cm
所有者:アルベルティーナ美術館(オーストリア)
ジャンル:動物画
キーワード:うさぎ・兎
デューラー『野うさぎ』作品解説
『野うさぎ』はデューラーのスケッチ。うさぎの柔らかな毛の質感が見事に再現された水彩画です。珍しい動物を見るのが好きだったというデューラーは、自然や動物のスケッチも好んで行いました。
アルブレヒト・デューラー『東方三賢王の礼拝』
作品名:東方三賢王の礼拝
作者:アルブレヒト・デューラー
制作年:1504年
種類:板、油彩
寸法:99㎝×113.5㎝
所有者:ウフィッツィ美術館(イタリア・フィレンツェ)
ジャンル:宗教画(歴史画)
キーワード:聖母・聖母子、東方三博士の礼拝
デューラー『東方三賢王の礼拝』作品解説
デューラー『東方三賢王の礼拝』は、星に導かれ東方からやってきた三賢王が生まれたばかりのイエスに贈り物をする新約聖書の一場面を表した油彩画。礼拝堂に飾られる祭壇画として注文されたもので、デューラー初期の作品になります。
アルブレヒト・デューラー『薔薇冠の祝祭』
作品名:薔薇冠の祝祭 Das Rosenkranzfest
作者:アルブレヒト・デューラー
制作年:1506年
種類:板、油彩
寸法:162cm×194cm
所有者:プラハ国立美術館(チェコ)
ジャンル:宗教画(歴史画)
キーワード:聖母・聖母子、
デューラー『薔薇冠の祝祭』作品解説
デューラー『薔薇冠の祝祭』は、ドイツ人教会サン・バルトロメオ教会の祭壇画として制作された油彩画。ヴェネツィアで学んだ鮮やかな色彩をふんだんに取り入れられました。画面右端に描かれた木にもたれかかるように立ち、画面のこちら側を見つめているのは作者であるデューラー本人だといわれています。
アルブレヒト・デューラー『アダムとエヴァ』
作品名:アダムとエヴァ
作者:アルブレヒト・デューラー
制作年:1507年
種類:板、油彩
寸法:209cm×81cm※1枚ずつ
所有者:プラド美術館(スペイン・マドリード)
ジャンル:宗教画(歴史画)
キーワード:アダムとイブ
デューラー『アダムとエヴァ』作品解説
デューラー『アダムとエヴァ』は、デューラーが2度目のヴェネツィア訪問から帰国してから制作した油彩画。イタリア・ルネサンスで人体のプロポーションについて学ぶことになったデューラーは、理想的な裸体像としてアダムとエヴァを制作しました。デューラーはアダムとエヴァの木版画(1504年制作)も残しています。
アルブレヒト・デューラー『聖三位一体』
作品名:聖三位一体
作者:アルブレヒト・デューラー
制作年:1511年
種類:板、油彩
寸法:145cm×123.4cm
所有者:ウィーン美術史美術館(オーストリア)
ジャンル:宗教画(歴史画)
キーワード:
デューラー『聖三位一体』作品解説
デューラー『聖三位一体』は、ランダウアー祭壇画とも呼ばれるデューラーが手がけた最後の祭壇画。聖霊である白鳩、神、キリストの三位一体の周囲には天使、聖人、旧約聖書の登場人物などが描かれています。
アルブレヒト・デューラー『騎士と死と悪魔』
作品名:騎士と死と悪魔
作者:アルブレヒト・デューラー
制作年:1513年
種類:エングレーヴィング
寸法:24.5cm×18.8cm
所有者:国立西洋美術館(日本)、カールスルーエ州立美術館(ドイツ)
ジャンル:
キーワード:デューラー三大銅版画の1つ
デューラー『騎士と死と悪魔』作品解説
デューラー『騎士と死と悪魔』は、『メランコリアⅠ』や『書斎の聖ヒエロニムス』と並びデューラーの三大版画と言われる作品です。頭蓋骨や悪魔といった死や不吉を表すものの中を毅然とした態度で進む馬と騎士が描かれており、遠くに見える城は神を指しているのではないかといわれています。
アルブレヒト・デューラー『メランコリアI』
作品名:メランコリアI
作者:アルブレヒト・デューラー
制作年:1514年
種類:エングレーヴィング
寸法:23.9cm×18.6cm
所有者:アルベルティナ美術館(オーストリア)
ジャンル:寓意画
キーワード:デューラー三大銅版画の1つ
デューラー『メランコリアI』作品解説
デューラー『メランコリアI』は、『騎士と死と悪魔』や『書斎の聖ヒエロニムス』と並びデューラーの三大版画と言われる作品。人間の持つ感情「憂鬱」が主題であり、これは当時流行した理論である四体液説(多血質、粘液質、胆汁質、黒胆汁)のなかの黒胆汁に当てはまります。羽根の生えた女性の周囲に置かれているものには寓意が込められており、建物の壁にかかっているのは砂時計と魔方陣です。手先が器用で精密な作業が得意だったデューラーらしい精密なエングレーヴィングです。
アルブレヒト・デューラー『書斎の聖ヒエロニムス』
作品名:書斎の聖ヒエロニムス
作者:アルブレヒト・デューラー
制作年:1513年
種類:エングレーヴィング
寸法:24cm×18.4cm
所有者:ドレスデン銅版画展示室(ドイツ)
ジャンル:宗教画(歴史画)
キーワード:聖ヒエロニムス、デューラー三大銅版画の1つ
デューラー『書斎の聖ヒエロニムス』作品解説
デューラー『書斎の聖ヒエロニムス』は、前述の『メランコリアI』や『騎士と死と悪魔』と並びデューラーの三大版画と言われる作品。この時期のデューラーは精力的に銅版画に取り組んでおり、窓から差し込む光や室内の光などからはデューラーがエングレーヴィングでの陰影表現を極めたことが伝わってきます。
アルブレヒト・デューラー『四人の使徒』
作品名:四人の使徒
作者:アルブレヒト・デューラー
制作年:1523-1526年
技法:板、油彩
種類:204cm×74cm※1枚ずつ
所有者:アルテ・ピナコテーク(ドイツ)
ジャンル:宗教画(歴史画)
キーワード:聖ヨハネ・聖ペテロ・聖マルコ・聖パウロ
デューラー『四人の使徒』作品解説
デューラー『四人の使徒』はデューラー晩年の作品。当時流行した理論である四体液説にならい、新約聖書に登場する4人の使徒(左からヨハネ、ペテロ、マルコ、パウロ)を多血質、粘液質、胆汁質、黒胆汁として描きました。