ジョルジョーネとは?
ジョルジョーネ Giorgione
ジョルジョーネは盛期ルネサンス・ヴェネツィア派の画家。ジョルジョーネが残した作品は多くありませんが、横たわる裸婦像をいち早く構図に取り入れるなど、西洋美術史に名を残す芸術家です。
ジョルジョーネの代表作に『眠れるヴィーナス』『嵐 テンペスタ La Tempesta』『ラウラ』などがあります。
謎に満ちた芸術家ジョルジョーネの生涯
作品に謎が多いといわれるジョルジョーネですが、その生涯も明らかになっていないことが多く、謎だらけです。
ジョルジョ・ヴァザーリの著書「画家・彫刻家・建築家列伝」によると、ジョルジョーネはイタリアのカステルフランコ・ヴェーネト生まれ。ジョヴァンニ・ベリーニの工房で修行していたとみられており、ティツィアーノとともに学び、ジョルジョーネはティツィアーノの兄弟子だったといわれています。実際「田園の奏楽」のようにジョルジョーネとティツィアーノの共作といわれる作品も残されています。
ジョルジョーネ作と認められる作品は数点
早くして亡くなったジョルジョーネの現存する作品は非常に少なく、間違いなくジョルジョーネの作品であると専門家が認めている作品は数点、そのうちジョルジョーネの署名の入った作品は2点、さらに制作年も記されているものはその2点のうち1点のみです。
これほどまでにジョルジョーネの現存作品が少ない理由としては、ジョルジョーネが個人の収集家向けの作品を手がけていたこと、贋作が多いこと、ジョルジョーネの死後に手を加えられた作品もありジョルジョーネの作品であるかどうかの見極めが難しいことなどが挙げられます。
ジョルジョーネが活躍した盛期ルネサンスとは
古代ギリシャ・ローマ美術を規範としたルネサンス美術。ルネサンス期を大きく分けると初期ルネサンス盛期ルネサンス期、盛期ルネサンスは更に構図やデッサンのフィレンツェ派、色彩のヴェネツィア派に分かれます。ジョルジョーネは盛期ルネサンス・ヴェネツィア派の芸術家です。
ジョルジョーネの特徴・作品鑑賞ポイント
抒情的な風景に人物を溶け込ませたジョルジョーネ
色彩豊かで詩的な風景描写、抒情的で人物と風景が調和した作品が得意だったジョルジョーネ。人物の周囲に広がる風景を、風景画といえるほどのレベルで丁寧に描きあげ、『嵐 ラ・テンペスタ』は最初の風景画ともいわれています。
ジョルジョーネから始まった横たわる裸婦像
『眠れるヴィーナス』は、風景のなかに裸婦を溶け込ませた初めての表現であり、「キャンヴァスに横たわる裸婦」という構図を確立した作品といえるでしょう。『眠れるヴィーナス』は、色彩豊かで肉感的な裸婦が効果的な構図のなかに収められた名画として、後の芸術家が幾度となくオマージュを捧げている作品でもあります。
ジョルジョーネの代表作・主要作品
ジョルジョーネ『ユディト』
ジョルジョーネ『ユディト』は、酔いつぶれたアッシリアの将軍ホロフェルネスの首を切り落とした美しき女性ユディトが将軍の頭を踏みつける様子を描いた絵画。おだやかにも見えるユディトの表情や柔らかで鮮やかな色彩の着衣と生々しいホロフェルネスの生首のギャップが美しい作品です。
作品名:ユディト
作者:ジョルジョーネ
制作年:1504年
種類:板、油彩
寸法:144cm×66cm
所有者:エルミタージュ美術館(ロシア・サンクトペテルブルク)
ジョルジョーネ『ラウラ』
ジョルジョーネ『ラウラ』は、ジョルジョーネ作といわれる作品のなかで唯一署名も制作年も記されている作品。月桂樹を背景に佇む若い女性は、純潔や忠実を表す月桂樹からモデルは花嫁だという説のほか、女性がまとう毛皮やあらわになった胸元、ラウラという名称からいかがわしい商売をしていた女性とする説もあります。
作品名:ラウラ
作者:ジョルジョーネ
制作年:1506年
種類:板、油彩※キャンバスに移植済
寸法:41cm×33.5cm
所有者:美術史美術館(ウィーン)
ジョルジョーネ『矢を持つ少年』
ジョルジョーネ『矢を持つ少年』は、ジョルジョーネ作といわれる作品のなかで署名が残っている2点のうちの1点です。
作品名:矢を持つ少年
作者:ジョルジョーネ
制作年:1506年頃
種類:板、油彩
寸法:48cm×42cm
所有者:美術史美術館(ウィーン)
ジョルジョーネ『三人の哲学者』
ジョルジョーネ『三人の哲学者』は、鮮やかでありながら柔らかく調和の取れた色彩がヴェネツィア派のジョルジョーネらしい作品。未完であった本作はセバスティアーノ・デル・ピオンポが完成させています。
三人の哲学者というタイトルではありますが、これはジョルジョーネがそう命名したわけではなく、東方三博士の礼拝を主題としているのではないか、もしくは人生の世代にわたる寓意を主題にしているのではないか、はたまた哲学の3つの流派を暗示しているのではないか、といった諸説が入り乱れています。
作品名:三人の哲学者
作者:ジョルジョーネ
制作年:1506年頃
種類:キャンバス、油彩
寸法:121cm×141cm
所有者:美術史美術館(ウィーン)
ジョルジョーネ『嵐 テンペスタ La Tempesta』
ジョルジョーネ『嵐 テンペスタ La Tempesta』は、最初の風景画ともいわれる名画。ジョルジョーネの代表作です。
主題は聖母子なのか、アダムとイヴなのか、それ以外の寓意がこめられているのか、現在でも専門家の間でも意見が分かれており、謎の多い絵画としても有名です。この絵画のなかで唯一わかっていることは、左側に立つ男性は裸の女性の上に塗り重ねられているものだということ。ジョルジョーネが個人の収集家向けの作品を手がけていたことを考えれば、注文主にしか分からない寓意がこめられている可能性も否定できないでしょう。
作品名:嵐 テンペスタ La Tempesta
作者:ジョルジョーネ
制作年:1505-1507年
種類:キャンバス、油彩
寸法:83cm×73cm
所有者:アカデミア美術館(イタリア・ヴェネツィア)
ジョルジョーネ『眠れるヴィーナス』
ジョルジョーネ『眠れるヴィーナス』は、前述の『嵐』と並ぶジョルジョーネの代表作。ジョルジョーネの死後、ティツィアーノが風景などを加筆し仕上げた作品です。
眠れるヴィーナスの柔らかな色彩と構図は、ティツィアーノの「ウルビーノのヴィーナス」、マネの「オランピア」など多くの芸術家のインスピレーションを刺激しました。
作品名:眠れるヴィーナス
作者:ジョルジョーネ
制作年:1510-1511年
種類:キャンバス、油彩
寸法:108.5cm×175cm
所有者:アルテ・マイスター絵画館(ドイツ・ドレスデン)