リュートを調弦する女
作品解説
『リュートを調弦する女』は、ヨハネス・フェルメールによる風俗画。1664年頃に制作された油彩画で、現在はアメリカのメトロポリタン美術館に所蔵されています。
作品の損傷が激しく、一時は『リュートを調弦する女』はフェルメール作ではないと真贋が割れたこともありましたが、現在はフェルメール作であるというのが定説になっています。
作品は少し薄暗い空模様を感じさせる色使いになっており(これは損傷のせいもありますが)、フェルメールの明るい光が溢れる作品とは少し異なった印象を受けます。また、女性の表情も眉毛がなく人間味の薄い顔をしています。
鑑賞のポイント
『リュートを調弦する女』は大ぶりな真珠の耳飾りと首飾り、オコジョの毛皮がついたアーミンを着ていることから、この女性が裕福な上流階級の女性であることがうかがえます。柔らかな光のなかでリュートを調弦する女性の視線は外へ向かっており、リュートを調弦しながら、ここには居ない愛する人を想う表情のようです。
『リュートを調弦する女』は、『窓辺でリュートを弾く女』『窓辺でギターを弾く女』という邦題で呼ばれることもあります。しかし、描かれているのはリュートであり、女性の左手はリュートのペグ部分をいじっていることから、「弾く」ではなく、「調弦する」が正しいでしょう。
音楽が教会のものから市民のものへと移り変わったこともあり、市民が家庭で音楽を奏でたり、楽器を持ち寄って合奏を楽しむことは、オランダの裕福な家庭では一般的なことでした。
また、テーブルの上には楽譜と思われる紙が重なって置かれていますが、この時代のオランダは印刷作業が盛んで、一般市民でも楽譜を手に入れることが容易であり、楽器を楽しむ市民たちの多くは楽譜を見て演奏することができました。
テーブルの向かい側の椅子に置かれているのはヴィオラ・デ・ガンバという楽器です。
『リュートを調弦する女』の壁には世界地図がかけられています。また、女性の右側に置かれた椅子は空席になっています。このことから、女性の愛する夫(もしくは恋人)はが航海に出かけて不在であり、女性は彼を待ち焦がれているとも考えられます。
基本情報
フェルメール展・開催中
『リュートを調弦する女』は2018年秋スタートのフェルメール展に展示されます。フェルメール展の展示作品や混雑状況、チケットの購入方法など別記事にまとめましたので、お出かけの参考になさってください。
●フェルメール展
上野の森美術館 2018年10月5日~2019年2月3日
大阪市立美術館 2019年2月16日~2019年5月12日
ヨハネス・フェルメールとは
フェルメールの生涯・作品・鑑賞ポイント
ヨハネス・フェルメールは、光の魔術師とも呼ばれるバロック美術の巨匠です。柔らかな光の溢れる油彩画を得意とし、代表作に『真珠の耳飾りの少女』『牛乳を注ぐ女』『デルフトの眺望』などがあります。フェルメールは現存する作品が大変少なく、寡作の画家としても知られます。
YouTube動画 フェルメール全作品集
ヨハネス・フェルメールの全作品を4分にまとめた動画をYouTubeにアップしました。動画は今後も画家別に作っていく予定です。よろしければチャンネル登録をお願いいたします。