紳士とワインを飲む女(ぶどう酒のグラス・ワイングラス)
作品解説
『紳士とワインを飲む女(ぶどう酒のグラス)』は、男性と一緒にワインを飲む女性が描かれたヨハネス・フェルメールの風俗画。1658年~1660年頃に制作された油彩画で、現在はベルリン国立美術館の絵画館に所蔵されています。
男性と女性がワインを飲む様子はオランダの絵画ではよく用いられるテーマであり、男性が女性を誘惑する様子として捉えられていることから、『紳士とワインを飲む女』の男女も恋人同士か不倫関係ではないかと考えられます。男性の目線はワインを飲む女性の表情に注がれており、手はワイン入れを握ったまま。女性にワインをたくさん飲ませて酔わせようとしているかのようです。
部屋の床タイルの色柄やステンドグラスの柄はフェルメール作『ワイングラスを持つ娘』と共通しており、フェルメールがカメラ・オブスクラによって写し取った特定の部屋をモデルに描いたと考えられます。
鑑賞のポイント
オリエンタルな柄のタペストリーと白いワイン入れはフェルメール作品にしばしば登場するモティーフ。頬を紅潮させながらワインを飲む女性の顔をジッと見つめる男性が下心を持って女性を酔わせようとしているという解釈が一般的ですが、男性の顔にいやらしさは感じられず、すでにこの男女は恋仲のようにも見えます。女性の顔は頭巾とワイングラスでほとんどが隠れており、女性の気持ちをうかがい知ることができません。どのような気持ちで男性に見つめられながらワインを飲んでいるのか、画面のこちら側にいる鑑賞者の想像をかきたてます。
背もたれの先にライオンの彫刻が付いた椅子もフェルメールの絵画によく登場するモティーフ。椅子の上には恋の寓意でもある楽器のリュートが置かれており、ワインを飲む男女が恋仲であることを表しています。また、楽器の背面が描かれていることから、不倫関係のような愛の背徳感を表しているとも考えられます。
光が差し込む窓には、節制をあらわす馬具や定規を持った女性の柄が描かれたステンドグラスがはめ込まれています。ワインを飲んでいる女性に「ワインを飲みすぎて道を踏み外さないように」と警告しているかのようです。このステンドグラスのデザインは『ワイングラスを持つ娘』と同じものです。
基本情報
フェルメール展・開催中
『紳士とワインを飲む女』は2018年秋スタートのフェルメール展・東京会場に展示されます。フェルメール展の展示作品や混雑状況、チケットの購入方法など別記事にまとめましたので、お出かけの参考になさってください。
●フェルメール展
上野の森美術館 2018年10月5日~2019年2月3日
大阪市立美術館 2019年2月16日~2019年5月12日
ヨハネス・フェルメールとは
フェルメールの生涯・作品・鑑賞ポイント
ヨハネス・フェルメールは、光の魔術師とも呼ばれるバロック美術の巨匠です。柔らかな光の溢れる油彩画を得意とし、代表作に『真珠の耳飾りの少女』『牛乳を注ぐ女』『デルフトの眺望』などがあります。フェルメールは現存する作品が大変少なく、寡作の画家としても知られます。
YouTube動画 フェルメール全作品集
ヨハネス・フェルメールの全作品を4分にまとめた動画をYouTubeにアップしました。動画は今後も画家別に作っていく予定です。よろしければチャンネル登録をお願いいたします。