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『エマオの晩餐』カラヴァッジョ作品の解説

カラヴァッジョ作『エマオの晩餐』

『エマオの晩餐』作品解説

カラヴァッジョ『エマオの晩餐』1601年ロンドン・ナショナル・ギャラリー

カラヴァッジョエマオの晩餐』は、エルサレムから少し離れたエマオにキリストが現れた場面を描いた、カラヴァッジョの最高傑作とも評される宗教画。本作『エマオの晩餐』は1601年にマッティ家のために制作され、後にボルゲーゼ枢機卿が所有、現在はロンドン・ナショナル・ギャラリーが所蔵しています。

『エマオの晩餐』の登場人物たちは、141cm×196.2cmという大きな画面にほぼ人間の実物大で描かれており、鑑賞者である私たちはまるでキリストや弟子たちとテーブルを共にしているかのような感覚を覚えます。

明暗のはっきりとしたコントラストの強い表現がカラヴァッジョらしく、劇的でドラマティックな構図の『エマオの晩餐』は、度々模倣されるほど人気を博しました。

エマオの晩餐とは?

エルサレムから少し離れた地・エマオに復活したキリストが現れ、旅をしていたキリストの弟子クレオパらと出会います。弟子たちは男がキリストだと気付かぬまま、キリストを自分たちの宿に招き夕食を共にします。キリストが食事の席でパンをちぎったそのとき、弟子たちは男の正体がキリストであることに気付き驚愕しますが、キリストはすぐに姿を消してしまいました。

カラヴァッジョ『エマオの晩餐』で中央に座る男がキリスト、キリストの左側に立つ男は宿の主人、手前で驚いている2人の男がキリストの弟子たちです。このときキリストは以前の姿とは別の姿で現れたとされ、画面のなかのキリストは髭もなく、ふっくらとした若者のような姿で描かれています。

驚愕する弟子たちのリアリティ

エマオの晩餐の弟子たち

中央の赤い服の男性がキリストだと確信・驚愕する弟子たちの姿がリアリティをもって描かれており、右の弟子はまるで磔刑のように両手を広げ、左の弟子は驚きのあまり思わず椅子から立ち上がろうとしています。

カラヴァッジョが描く静物の美しさ

エマオの晩餐のテーブル

テーブルの端からはみだした果物籠や椅子から立ち上がろうとする男の肘、両手を広げる男の手指などが画面のこちら側に飛び出して見える効果と、キリストの前に広がるテーブル上の食事が、ドラマティックな場面を効果的に引き立てているようです。

テーブルの上には、パンやワインのほか、チキンや果物籠が置かれており、果物籠の影がキリストを象徴する魚の形をしているのもポイント。ガラス瓶や果物の表現には、若い頃から静物が得意だったカラヴァッジョの画力が余すところなく発揮されています。

カラヴァッジョ『エマオの晩餐』基本情報

  • 作品名:エマオの晩餐
  • Title:Supper at Emmaus
  • 作者:カラヴァッジョ(カラヴァッジオ)
  • 制作年:1601年
  • 種類:油彩、キャンバス
  • 寸法:141cm×196.2cm
  • 所有者:ロンドン・ナショナル・ギャラリー
カラヴァッジョ(カラヴァッジオ)の生涯と特徴・代表作・作品解説
カラヴァッジオ(カラヴァッジョ)はバロックを代表する画家。カラヴァッジオの写実性と劇的な明暗表現を組み合わせた作風は、これまでにないドラマティックな宗教画を生み出し、カラヴァジェスキと呼ばれる多くの模倣者ほか全ヨーロッパの芸術家に影響を及ぼしました。

もうひとつの『エマオの晩餐』

カラヴァッジョ『エマオの晩餐』1606年ブレラ美術館

カラヴァッジョは1606年にも同じ主題の作品『エマオの晩餐』を制作しています。こちらはカラヴァッジョが殺人を犯し、ローマから逃亡した先の山岳地帯で描いた作品で、作品制作によって得られた報酬は、いわば逃亡資金となりました。

そうした状況に置かれたカラヴァッジョの心理的な影響もあるのか、1601年の『エマオの晩餐』と比較すると、1606年の『エマオの晩餐』はダークな色彩で、より影が濃く、タッチが荒いのが特徴です。テーブルの上に置かれた食事も大変質素で、暗い雰囲気が画面全体を覆っています。

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