ロマネスク美術の特徴
ロマネスク美術とは
修道院の復興、聖遺物崇拝ブームによる聖地巡礼などもあり、キリスト教建築・美術の新しい時代がやってきます。ロマネスクとは「ローマ風」という意味で、11世紀後半から12世紀にかけての美術を「ロマネスク美術」と呼びます。
聖地巡礼などにより文化交流が行われたことにより、カロリング朝の伝統と地域の文化や東方文化などが混ざり合い、ヨーロッパ全域に独自の様式が確立していきました。
石造りの重厚なロマネスク建築
修道院を中心に広がったロマネスク建築は、石造りで窓が小さく壁面にフレスコ画による装飾が施されているのが特徴的です。窓が小さいのは、石造りの建物の重さを支えるために開口部を広く取ることができなかったため。扉口の上部にある半円の壁面装飾ティンパヌム、建物を支える石柱に施された彫刻などにもロマネスク独自の特徴が見られます。
フレスコ画による壁画装飾
ロマネスク建築の壁面装飾は、これまでのモザイク画から、壁に塗った漆喰が生乾きのうちに顔料で描くフレスコ画へと変化を遂げます。窓が少なく壁面が大きく取れるロマネスク建築ではフレスコ画が普及したことにより、より自由度の高い表現が可能となり、キリスト像や聖書を題材とする壁画が数多く描かれました。
奇跡を信じる信者を集める聖遺物箱
この時代に盛んに行われた聖地巡礼では、聖遺物に触れることで奇跡が起こると信じられており、聖人の遺骨や聖人にまつわる物を納める聖遺物箱は、多くの信者を集めるための重要な役割を担っていました。信仰心を高める狙いがある聖遺物箱にはきらびやかな装飾が施されています。
ロマネスク美術の代表作
ピザ大聖堂・鐘塔
『ピザ大聖堂・鐘塔』Pizza’s Cathedral bell tower
ロマネスク時代を代表する建築物。重厚な石壁や暗い室内(開口部が小さいため)のロマネスク建築で、大聖堂はバシリカ式。ビザンティン文化の影響も見られます。1987年にユネスコ世界遺産(文化遺産)に登録されました。
製作年:11・14世紀
所在地:イタリア・トスカーナ州
聖女フォアの遺物像
『聖女フォアの遺物像』
崇敬の対象となる諸聖人の遺品や遺骸を納める聖遺物箱。聖遺物は拝むだけで奇跡を起こすと信じられており、多くの信者が巡礼・拝観に訪れました。『聖女フォアの遺物像』には、禁教時代に布教の罪で処刑された聖フォアの頭蓋骨が納められています。聖フォア修道院教会は代表的なフランスロマネスク建築です。
製作年:10世紀
所有者:サント・フォア修道院付属教会
栄光のキリスト
『栄光のキリスト』
サン・クリメン教会の高さ8メートルの巨大壁画をカタルーニャ美術館に移設したもの。ロマネスク壁画の傑作と言われるキリストはスペインらしく色鮮やかで力強い表現となっています。
制作年:1123年
所有者:カタルーニャ美術館(スペイン・バルセロナ)
サン・セルナン聖堂
『サン・セルナン聖堂』Basilica of Saint-Sernin
重厚な石壁と小さな開口部、聖地巡礼の訪れる参拝者を多数収容可能な巡礼路聖堂。現存するロマネスク様式の教会堂建築としては同国最大の規模となります。
製作年:1080-1120年頃
所在地:フランス・トゥールーズ
使徒たちに布教の使命を授けるキリスト
『使徒たちに布教の使命を授けるキリスト』
教会の扉上部にある半円の壁面装飾ティンパヌムで、現在のものは再建されたもの。「ヴェズレーの教会と丘」は世界遺産です。
製作年:1120-30年
所在地:サント・マドレーヌ教会(フランス・ヴェズレー)
サント・マドレーヌ教会
『サント・マドレーヌ教会』Basilique Sainte-Madelaine
高窓のあるゴシックへの橋渡し的な建造物。現在の建物は再建されたもので、「ヴェズレーの教会と丘」は世界遺産です。
製作年:1120-60年頃
所在地:フランス・ヴェズレー