ゴシック美術の特徴
ゴシック美術とは
ゲルマン系部族のゴートに由来するゴシック美術。フランス発祥のゴシック美術は、北フランスやドイツなどヨーロッパの北部を中心に広がりました。高い塔やステンドグラスが用いられたゴシック建築による大聖堂にはゴシック美術の特徴が顕著に見られます。
大きな開口部が特徴のゴシック建築
重厚な石造りの構造を支えるため、窓が小さく壁面や柱が多かったロマネスク建築。ゴシック建築ではフライング・バッドレスと呼ばれる飛梁により建物の荷重を分散することにより、開口部や窓を大きく取ることができるようになります。
聖堂はどんどん大型化し、塔は高くなり、窓には大きくゴージャスなステンドグラスがはめ込まれました。ステンドグラスは装飾以外にも文盲な人々の聖書としての役割も果たしたと考えられています。
ロマネスク美術の彫刻は、建築に彫刻のデザインを合わせる必要がありましたが、ゴシック美術では建築とは別に独立した彫刻表現が可能となります。ゴシック美術ではリアルな写実表現の聖母像などの丸彫りの装飾的な彫刻も数多く作られました。
ゴシック美術の代表作
シャルトル大聖堂
『シャルトル大聖堂』
世界遺産。高く伸びた塔や大きな窓が特徴的なゴシック建築の代表作です。
製作年:12世紀後半-13世紀
所在地:フランス・シャルトル
王の扉口(シャルトル大聖堂)
『王の扉口(シャルトル大聖堂)』
世界遺産に登録されているシャルトル大聖堂の扉口です。
製作年:1144-55
所在地:シャルトル大聖堂(フランス・シャルトル)
美しき絵ガラスの聖母(シャルトル大聖堂)
『美しき絵ガラスの聖母(シャルトル大聖堂)』
世界遺産に登録されているシャルトル大聖堂のステンドグラス。文盲の人々にとっては目で読む聖書でもあったキリスト教美術のなかで、ステンドグラスは神の光のイメージを最大に生かせるものであり、ゴシック美術の代表的な表現手法でもありました。
製作年:12世紀
所在地:シャルトル大聖堂(フランス・シャルトル)
バラ窓(シャルトル大聖堂)
『バラ窓(シャルトル大聖堂)』
世界遺産に登録されているシャルトル大聖堂のステンドグラス。放射状に広がるデザインのステンドグラスを一般的にバラ窓と呼びます。
製作年:12世紀
所在地:シャルトル大聖堂(フランス・シャルトル)
ランスのノートル=ダム大聖堂
『ランスのノートル=ダム大聖堂』Cathédrale Notre-Dame de Reims
世界遺産。シャルトル大聖堂やアミアン大聖堂と並び、フランス国内におけるゴシック様式の傑作の一つと言われます。
製作年:12世紀
所在地:フランス・ランス
ドゥッチオ『荘厳の聖母(ルチェライの聖母)』
ドゥッチオ『荘厳の聖母(ルチェライの聖母)』
シエナの画家。
作者:ドゥッチオ(ドゥッチョ・ディ・ブオニンセーニャ)
制作年:1285年頃
所有者:ウフィツィ美術館(イタリア・フィレンツェ)
チマブーエ『サンタ・トリニタの聖母』
チマブーエ『サンタ・トリニタの聖母』
チマブーエはジョット以前のイタリアを代表する画家であり、ジョットの師匠と言われる画家です。
作者:チマブーエ
制作年:1290年
所有者:ウフィツィ美術館(イタリア・フィレンツェ)
シモーネ・マルティーニ『受胎告知』
シモーネ・マルティーニ『受胎告知』
受胎告知は、大天使ガブリエルがマリアに神の子イエスの母となることを告げる聖書の有名なシーン。画面左の人物はシエナの守護聖人です。
作者:シモーネ・マルティーニ
制作年:1333年
所有者:ウフィツィ美術館(イタリア)
国際ゴシック美術の特徴
国際ゴシック美術とは
1380年から1430年にかけて、芸術家たちの交流や王室が美術に大金を投じたことをきっかけに、ミラノやブルゴーニュなど複数の地域に影響を与えた様式の寄せ集めをゴシック美術と呼びます。北ヨーロッパのゴシック様式と写実的な表現が融合した国際ゴシック美術は、優雅で装飾的、豪華絢爛な表現が多く見られます。代表的な芸術家としては、ピサネッロ、ランブール兄弟、ジェンティーレ・ダ・ファブリアーノが挙げられます。
国際ゴシック美術の代表作
ランブール兄弟『ベリー公のいとも豪華なる時祷書(1月)』
ランブール兄弟『ベリー公のいとも豪華なる時祷書(1月)』
オランダ出身の写本彩色師であったランブール兄弟に、中世フランスの王族ベリー公ジャン1世が作らせた装飾写本。青や金が多く用いられているのが特徴的です。
作者:ランブール兄弟
制作年:1413-1416年
所有者:シャンティイ・コンデ美術館(フランス)※非公開
ファブリアーノ『マギの礼拝(東方三博士の礼拝)』
ファブリアーノ『マギの礼拝(東方三博士の礼拝)』
ピサネッロと並びイタリアの国際ゴシック美術を代表する画家。東方三博士の礼拝は、誕生したばかりのイエスを礼拝する3人の王の一行を描いたもので、キリスト教美術ではよく用いられるモティーフです。金色の輝きがまぶしい国際ゴシック美術らしい作品となっています。
作者:ファブリアーノ(ジェンティーレ・ダ・ファブリアーノ)
制作年:1423年
所有者:ウフィツィ美術館(イタリア)
ピサネッロ『エステ家の姫君の肖像』
ピサネッロ『エステ家の姫君の肖像(貴婦人の肖像)』
ジェンティーレ・ダ・ファブリアーノと並ぶ国際ゴシック美術の代表的な画家。ピサネッロは絵画だけでなく、肖像メダルの製作者としても優れた作品を残しました。
作者:ピサネッロ
制作年:1441年
所有者:ルーヴル美術館(フランス)