初期中世美術の特徴と代表作

初期中世美術の特徴とは

初期中世美術はいつ頃の美術?

ドイツ・フランス・アイルランドなどの地域では、西ローマ帝国が滅亡した後、フランク王国やケルト民族による独自のキリスト教文化・美術が誕生しました。この時代の美術を「初期中世美術」と呼びます。歴史としては西ローマ帝国が滅亡した476年(5世紀)頃から10世紀頃です。

装飾文様が特徴的なケルト民族による写本装飾

多くの民族や地域とキリスト教美術が結びついた初期中世美術の代表的な美術品は、スコットランドやアイルランドなどに暮らしたケルト民族による装飾写本。古来からの自然崇拝を土壌にした渦巻文や組紐文などの装飾文様が特徴で『ケルズの書』『ダロウの書』『リンディスファーンの書』は三大福音書写本として知られます。ケルト美術の写本装飾は、複雑な装飾や図案化されたイニシャル、モノグラム装飾など、キリスト教美術のなかでも独特の芸術性を誇っています。

古典復興を掲げたカロリング朝

フランク王国カロリング朝では、カロリング・ルネサンスと呼ばれる古典復興が行われ、文化の隆盛が見られました。古代ローマとビザンチン美術を手本としており、人物をモチーフにした写本『福音書記者聖マルコ像(アダの福音書)』『宝物庫の福音書』などがあります。この時代は宝飾工芸や象牙彫刻も盛んでした。

神聖ローマ帝国オットー朝美術

ドイツ中心のオットー朝では、ビザンティンの伝統と結びついた荘厳な美術が生み出されました。壁画はほとんどが失われてしまっていますが、写本は現存しています。なかでも派手な装飾のライヒェナウ派『オットー三世の福音書』、軽い色彩のケルン派『ヒトダの福音書』などの写本が有名です。

またオットー朝時代はカロリング朝と同じく宝飾工芸も盛んでした。

初期中世美術の代表作

ケルズの書

ケルズの書『ケルズの書』

製作年:800年頃
所有者:トリニティ大学図書館(ダブリン)

三大福音書写本のひとつ。キリストのモノグラム。
キリスト教修道士によってハイバーノ・サクソン様式で装飾された福音書です。

リンディスファーンの書

リンディスファーンの書『リンディスファーンの書』

ケルト美術の至宝であり、三大福音書写本のひとつ。手書きのラテン語装飾写本。
キリスト教修道士によってハイバーノ・サクソン様式で装飾された福音書。十字架を装飾的にデザインしたカーペット・ページと呼ばれるページが特徴的です。

製作年:7世紀末
所有者:大英図書館(イギリス)

福音書記者聖マルコ像(アダの福音書)

福音書記者聖マルコ像(アダの福音書)『福音書記者聖マルコ像(アダの福音書)』

この時代の写本はモザイクや板絵などと並ぶ絵画芸術でした。古代ローマ末期的な様式の写本挿画が用いられており、左の挿画はキリスト教の聖人である福音書記者聖マルコが描かれたものです。

製作年:800年頃
所有者:トリーア市立図書館(ドイツ)

ペテロの足を洗うキリスト

ペテロの足を洗うキリスト『ペテロの足を洗うキリスト』

オットー3世の典礼用福音書より。オットー朝ライヒェナウ派の豪華な写本技術が見られます。

製作年:10世紀末頃
所有者:バイエルン州立図書館(ミュンヘン)

ヒルデリーヒ1世の宝物

ヒルデリーヒ1世の宝物『ヒルデリーヒ1世の宝物』

メロヴィング朝の代表的な貴金属工芸品です。

製作年:480年頃
所有者:パリ国立図書館

アーヘンの宮廷礼拝堂

アーヘンの宮廷礼拝堂

Photo by CEphoto, Uwe Aranas / 

『アーヘンの宮廷礼拝堂』

アルプス以北では最大のドーム建築(建築当時)。世界文化遺産に登録されています。

製作年:786年頃
所在地:ドイツ西部

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