真珠の耳飾りの少女
作品解説
『真珠の耳飾りの少女(青いターバンの少女)』は、オランダ人画家ヨハネス・フェルメールの絵画のなかで最も有名で、最も人気のある油彩画。1665年~1666年頃に制作された作品で、現在はオランダのマウリッツハイス美術館に所蔵されています。
寡作の画家といわれるフェルメールの絵画作品のなかで、背景が塗りつぶされた肖像画はこの『真珠の耳飾りの少女』と『少女』の2点のみ。
黒の背景に、鮮やかなフェルメールブルー&イエローのターバンを巻いた少女が浮かび上がり、その少女の振り向きざまの輝く瞳や耳に飾られた真珠は光り輝いています。艶感のある少し開いた唇は何かを語りだしそうです。
『真珠の耳飾りの少女』は静かな微笑みと上品な佇まいから「オランダのモナ・リザ」「北のモナ・リザ」ともいわれます。
NHK・Eテレのアニメ美術番組びじゅチューン!のモデル作品として取り上げられたことから、お子様にも人気のフェルメール作品です。
作品価値が認められたのは最近
画家と家業を両立し、晩年は家計が破綻するほど生活が苦しかったフェルメール。この作品『真珠の耳飾りの少女』はフェルメールが亡くなった後1696年に競売にかけられており、その後1881年行われたオークションでは日本円で3千円~1万円ほどという値で落札されていたことがわかっています。現在のフェルメール人気からは信じられないような話ですね。
鑑賞のポイント
真珠の耳飾りの少女のモデルは誰?
この眉毛がない美しい少女に特定のモデルがいたのかは分かっていません。当時のオランダのファッションでは頭にターバンを巻くことはなかったことから国籍も不明とされ、「真珠の耳飾りの少女はトローニー(特定の誰かではない人物画)である」という説が有力です。当時のオランダでは真珠はダイヤモンドに匹敵するほど高価なものだったので、豊かな暮らしをしていた上流市民のトローニーということになるでしょうか。
フェルメールブルーのターバン
真っ暗な背景に浮かび上がる、少女の頭に巻かれたウルトラマリンブルーのターバンは、ラピスラズリの主成分であるウルトラマリンで作られた顔料で描かれており、別名フェルメールブルーとも呼ばれます。フェルメールはウルトラマリンの顔料を透明感が出るほど油で薄めて何層も塗り重ねるグレーズ法を用いてフェルメールブルーのターバンを描いています。
鮮やかでありながら上品な調和をみせるフェルメールブルーとイエローの組み合わせは、お互いを引き立てる補色関係にあり、後の印象派にも影響を与えました。
画面のこちら側を見つめる瞳や唇の艶感、大粒の真珠のイヤリングは、少量の白い顔料で巧みに表現されており、光の魔術師とも呼ばれるフェルメールが暗い画面に浮かび上がる光にこだわっていたことが見てとれます。特に作品タイトルにもなっている真珠の耳飾りは、少女の服の白い襟が映りこんで光る静謐な表現が画面の中で静かな存在感を放っています。
基本情報
フェルメール展・開催中
2018年秋より東京・上野にてフェルメール展開催中、2019年2月からは大阪に巡回予定です。フェルメール展の展示作品や混雑状況、チケットの購入方法など別記事にまとめましたので、お出かけの参考になさってください。
●フェルメール展
上野の森美術館 2018年10月5日~2019年2月3日
大阪市立美術館 2019年2月16日~2019年5月12日
ヨハネス・フェルメールとは
フェルメールの生涯・作品・鑑賞ポイント
ヨハネス・フェルメールは、光の魔術師とも呼ばれるバロック美術の巨匠です。柔らかな光の溢れる油彩画を得意とし、代表作に『真珠の耳飾りの少女(本作品)』『牛乳を注ぐ女』『デルフトの眺望』などがあります。フェルメールは現存する作品が大変少なく、寡作の画家としても知られます。
YouTube動画 フェルメール 全作品集
ヨハネス・フェルメールの全作品を4分にまとめた動画をYouTubeにアップしました。動画は今後も画家別に作っていく予定です。よろしければチャンネル登録をお願いいたします。