『ブレダの開城』解説・作品鑑賞ポイント
ブレダの開城 作品解説
『ブレダの開城』はバロック美術の巨匠であるスペインの画家ディエゴ・ベラスケスによる油彩画。『槍』『ラス・ランサス』とも。1634年~1635年頃に制作された油彩画で、マドリードにあるレティーロ王宮「諸王国の間」で公開され、1819年以降はプラド美術館に所蔵されています。
『ブレダの開城』は、フェリペ4世の離宮として造営されたレティーロ「諸王国の間」を飾った戦勝画12点のうちのひとつであり、オランダの要塞都市ブレダをスペイン軍が陥落させたフェリーペ4世の貴重な戦勝10周年を記念し、スペイン王宮からベラスケスに注文された作品です。ベラスケスは他のスペイン画家の手本となるよう『ブレダの開城』の制作に意欲的に取り組んだといわれます。
ブレダの開城 鑑賞のポイント
ブレダの開城の舞台・状況
南オランダのアントウェルペン・ブレダを巡りスペインとオランダの間で起きた戦では、オランダ側は川をせき止めて平原を水浸しにし、対するスペイン側は壕を掘り流れ込んだ水を市内に逆流させるという戦術を取ったとされており、ベラスケス作『ブレダの開城』でも人々の後方に水浸しになっている風景が描きこまれています。9ヶ月の攻防はオランダ側が降伏を申し出たことで決着し、停戦協定が結ばれることになります。『ブレダの開城』は降伏文書が調印された3日後に、ブレダの総司令官フスティヌス・デ・ナッサウがスペイン軍のスピノラ将軍に要塞の城門の鍵を受け渡す場面が描かれています。敵将であったオランダ軍ナッサウの肩に手を置き、労うような様子を見せるスペイン軍将軍スピノラの姿がスペインの勝利を雄弁に物語るかのようです。
画面構成のポイント
X線検査により、右側の長槍は元は軍旗であったことが分かっていますが、軍旗を槍に変更したことにより鍵を中心としたオランダとスペインの人物に焦点が当たっています。オランダ軍を左前方に置きスペイン軍を馬の後ろに配する大胆な配置、人物のうち何人かだけを詳細に描き残りはぼやかせた演出が特徴で、作品中の兵士らの顔には疲労や安堵が表れています。
スペイン軍の馬の右端に描かれた白い帽子を被った髭の男はベラスケス本人だともいわれます。
スペイン将軍スピノラと親交のあったベラスケスにとって『ブレダの開城』はスピノラへの賛辞ともいえる作品であり、このスペインらしい戦勝画は後にベラスケスの代表作となりました。
基本情報
作品名:ブレダの開城(ラス・ランサス)
Title:The Surrender of Breda
作者:ディエゴ・ベラスケス
Artist:Diego Velazquez
制作年:1634-1635年
種類:油彩、キャンバス
寸法:307cm×367cm
所有者:プラド美術館