カラヴァッジョ作『ナルキッソス』
『ナルキッソス』作品解説
『ナルキッソス』は、水に映る自分の美しい姿に酔いしれて溺れ死んだ美少年ナルキッソス(ナルシス)をモデルにしたカラヴァッジョによる作品。1597年頃に制作された油彩画で現在は国立古典絵画館に所蔵されています。
カラヴァッジョの『ナルキッソス』は、NHK・Eテレで放送中のテレビ番組「びじゅチューン!」のモデル作品にも取り上げられるなど、日本でも広く知られている作品です。
ナルキッソスとは?ギリシャ神話の登場人物
ナルキッソス(ナルシス)は、ギリシャ神話の登場人物です。
男性からも女性からも愛されていた若く美しいナルキッソスは、ナルキッソスに恋をした森の妖精エコーをひどい態度で振り、ショックを受けたエコーは声だけの言霊となってしまいます。
ナルキッソスのひどい態度を知った女神ネメシスは、ナルキッソスに自分自身しか愛せないという罰を与えました。
自分自身しか愛せなくなったナルキッソスは、水を飲もうと泉に顔を近づけたときに水面に映る美しい自分の姿を見て恋に落ち、あまりの美しさに水面から目を離すことができなくなります。そして美しい自分の姿に吸い込まれるように泉に落ちて死んでしまったのでした(水面を見つめたまま餓死という説も有)。
ナルシスト(ナルシシスト)とは?
自分のことが大好きな自己愛の強い人、自分に陶酔している人に対して「あの人はナルシストだから」といった言い方をすることがあります。
自己愛が強いことをナルシシズム、自己愛が強い人のことをナルシスト(英:ナルシシスト)と言いますが、この語源は前述のナルキッソスからきています。
上下に分断された絵を包み込む構図
カラヴァッジョ『ナルキッソス』は、画面を上下に分断するように地上と水面が描かれています。
水面に映る自分の姿に見とれるナルキッソスは、地面に手を付き肘を曲げた姿勢で、うっとりと自分自身を見つめ、恋に落ちた悩ましげな表情。まるで水面に映る自分自身と手のひらを重ね合わせているかのようにも見えます。
上下に分断された画面をナルキッソスの腕が包み込む構図にカラヴァッジョの巧みな計算が感じられます。
カラヴァッジョ『ナルキッソス』基本情報
- 作品名:ナルキッソス
- Title:Narcissus
- 作者:カラヴァッジョ(カラヴァッジオ)
- 制作年:1597年頃
- 種類:油彩、キャンバス
- 寸法:110cm×92cm
- 所有者:国立古典絵画館