ボッティチェリとは?
サンドロ・ボッティチェッリ Sandro Botticelli
ボッティチェリ(Alessandro di Mariano Filipepi,アレッサンドロ・ディ・マリアーノ・フィリペーピ)は、初期ルネサンスを代表するイタリア人の画家。
ボッティチェリの代表作に『ヴィーナスの誕生』や『春 ラ・プリマベーラ』などがあります。
フィレンツェと共にあったボッティチェリの生涯
質素な家庭で育ったとされるボッティチェリは、フィリッポ・リッピの工房で修行を積んでおり、ヴェロッキオの工房では後のルネサンス三大巨匠となるレオナルド・ダ・ヴィンチとも出会っています。
フィレンツェという繁栄都市で、パトロンにメディチ家を持ったボッティチェリは、キリスト教美術だけでなくギリシャ神話などをテーマにした作品も多く手がけました。
しかし、メディチ家がフィレンツェから追放され、レオナルド・ダ・ヴィンチら新しい芸術が登場すると、ボッティチェリの影は薄くなり、その作品も古い芸術だと見なされ、晩年はひっそりと過ごすことになります。ボッティチェリの死後はその作品も忘れ去られ、再び脚光を浴びたのはラファエル前派が登場してからのことでした。
ボッティチェリの特徴・作品鑑賞ポイント
宗教と神話の融合・神話画の裸婦像を確立
西洋美術にはあまり興味がないという方でも、美術の教科書やファミリーレストランチェーンの壁面装飾などでボッティチェリの作品を一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。
ボッティチェリの作品として真っ先に挙げられる『ヴィーナスの誕生』は画面中央に裸婦が立っています。また、『春 ラ・プリマヴェーラ』には薄い布地から身体のラインが透ける女性たちが描かれています。
絶大な富と権力を持ち、多くの芸術家のパトロンでもあったメディチ家が主宰する「人文主義思想」のサークルに参加していたボッティチェリは、キリスト教とギリシャ・ローマ神話の融合を試みる機会に触れ、メディチ家の注文により世界的に愛される名画『春 ラ・プリマベーラ』や『ヴィーナスの誕生』を制作しました。
この時代の芸術は宗教と密接な関係にあり、裸婦が主題の絵画が大っぴらに制作されることはありませんでした。そうした背景を考えると、神話を主題にすることで絵画作品に裸婦を登場させたボッティチェリの作品を違った角度から見ることができます。
ボッティチェリの代表作・主要作品
ボッティチェリ『東方三博士の礼拝』
ボッティチェリ『東方三博士の礼拝』は、誕生したばかりのイエスを訪ねる3人の博士とイエス・聖母マリアを描いた宗教画。
ボッティチェリはパトロンであるメディチ家一族をこの宗教画のなかに描き込みました。キリストに礼拝する博士がコジモ・デ・メディチ、こちらを見つめる右端の茶色いガウンを着た男性はボッティチェリ自身だといわれています。
作品名:東方三博士の礼拝
作者:サンドロ・ボッティチェリ
制作年:1475年
種類:板、テンペラ
寸法:111cm×134cm
所有者:ウフィツィ美術館(イタリア・フィレンツェ)
ボッティチェリ『反逆者たちの懲罰』
ボッティチェリが他の画家たちと共に手がけたシスティーナ礼拝堂の壁画の一部。
作品名:反逆者たちの懲罰
作者:サンドロ・ボッティチェッリ
制作年:1481-1482年
種類:フレスコ
寸法:348.5㎝×570㎝
所有者:システィーナ礼拝堂
ボッティチェリ『春 ラ・プリマヴェーラ』
ボッティチェリ『春 ラ・プリマヴェーラ』には、中央にヴィーナス、ヴィーナスの頭上に盲目のクピド、右にクロリスとフローラ、左に三美神やメルクリウスが描かれた、ボッティチェリ作品を代表する絵画。
40種500本以上の花が描かれており、それらのほとんどは実際にフィレンツェ近郊に自生していた植物だということが分かっています。お腹の膨らんだヴィーナスはイエスを宿した聖母マリアとも考えられ、また植物にも様々な意味があることから寓意的な絵画としての解釈もできる名画です。
パトロンであったメディチ家の婚礼を記念して描かれたという説もありますが、実際のところは分かっていません。
作品名:春 ラ・プリマベーラ
作者:サンドロ・ボッティチェリ
制作年:1482年頃
種類:テンペラ
寸法:203cm×314cm
所有者:ウフィツィ美術館(イタリア・フィレンツェ)
ボッティチェリ『ナスタジオ・デリ・オネスティの物語』
全部で4作品からなる『ナスタジオ・デリ・オネスティの物語』のうちの一つ。3作品をプラド美術館、残りの1つは個人蔵となっています。
作品名:ナスタジオ・デリ・オネスティの物語
作者:サンドロ・ボッティチェッリ
制作年:1483年
種類:テンペラ
寸法:83㎝×138㎝
所有者:プラド美術館
ボッティチェリ『ヴィーナスとマルス』
ボッティチェリによる神話画。極端に横長なのは、ベッドの装飾に使われていたからと考えられます。
作品名:ヴィーナスとマルス
作者:サンドロ・ボッティチェッリ
制作年:1483年
種類:テンペラ
寸法:69㎝×173.5㎝
所有者:ロンドン・ナショナル・ギャラリー
ボッティチェリ『マニフィカトの聖母』
ボッティチェリ作品を代表する円形の聖母子像。
作品名:マニフィカトの聖母
作者:サンドロ・ボッティチェッリ
制作年:1483-1485年
種類:テンペラ
寸法:118cm
所有者:ウフィツィ美術館
ボッティチェリ『ヴィーナスの誕生』
ボッティチェリ『ヴィーナスの誕生』は、ボッティチェリ作品を代表する神話画。子供達にはびじゅチューン!(NHK・Eテレ)のヴィーナス委員長としてもお馴染みです。
キュテラ島に向かうヴィーナスに向かってゼフュロスとアウラが風を送り、島に到着した愛の女神ヴィーナスを時の女神ホーラが布をかけて迎えようとする場面が描かれています。
古代ローマ彫刻のようなポーズをとる誕生したばかりのヴィーナスは、恥じらいのヴィーナスとも呼ばれ、『春』と対になる作品であると考えられています。
作品名:ヴィーナスの誕生
作者:サンドロ・ボッティチェリ
制作年:1485年
種類:テンペラ
寸法:172.5cm×278.5cm
所有者:ウフィツィ美術館(イタリア・フィレンツェ)
ボッティチェリ『ザクロの聖母』
作品名:ザクロの聖母
作者:サンドロ・ボッティチェッリ
制作年:1487年
種類:テンペラ
寸法:148.7cm
所有者:ウフィツィ美術館
サンドロ・ボッティチェリと工房『赤い縁なし帽をかぶった若い男性の肖像』
ボッティチェリと工房による縁なし帽を被った男性の肖像。モデルはロレンツォ・トルナブオーニであったと考えられています。
作品名:赤い縁なし帽をかぶった若い男性の肖像
作者:サンドロ・ボッティチェッリ
制作年:1480-1490年頃
種類:板、油彩
寸法:57.5cm×38cm
所有者:ルーヴル美術館
ボッティチェリ『サン・マルコ祭壇画』
聖母戴冠の様子と4人の聖人が描かれた祭壇画。ボッティチェリの制作した祭壇画のなかで最も有名な作品となります。
作品名:サン・マルコ祭壇画
作者:サンドロ・ボッティチェッリ
制作年:1490-1492年
種類:テンペラ
寸法:378㎝×258㎝
所有者:ウフィツィ美術館
ボッティチェリ『神秘の降誕』
ボッティチェリの晩年の作品。
作品名:神秘の降誕
作者:サンドロ・ボッティチェッリ
制作年:1501年
種類:テンペラ
寸法:108.5cm×75㎝
所有者:ロンドン・ナショナル・ギャラリー