絵画芸術(画家のアトリエ・絵画の寓意)
作品解説
『絵画芸術』はアトリエで絵画を制作する画家を描いたヨハネス・フェルメールの寓意画。『画家のアトリエ』『絵画の寓意』『アトリエの寓意』とも。1666年~1667年頃に制作された油彩画で現在はオーストリア美術史美術館に所蔵されています。
風俗画の印象が強いフェルメールですが、作品の中に寓意を込めることも多く、この作品でもアトリエでモデルを描く画家を主題にしながら、絵画のなかに数々の寓意を込めました。この幅1メートルという大きなサイズの絵画『絵画芸術』に個人的な思い入れもあったのか、フェルメールはこの作品を最後まで手元に置いていました。
鑑賞のポイント
絵画芸術のモデルは誰?
『絵画芸術』のモデルになっている女性は、頭に繁栄と名誉を指す月桂樹、手には本と細長いラッパを持っており、文芸の女神クレイオか絵画の寓意と考えられます。画面のこちら側に背を向けて絵画を制作している画家はフェルメール本人といわれています。フェルメールが自身を絵画のなかに描き込んでいるのは、この『絵画芸術』と『取り持ち女』のみです。
ルプソワールによる奥行き感の演出
インテリアの流行だった古い地図
壁にかけられているのは古いオランダ(ネーデルラント)の地図。この時代のオランダでは古い地図をインテリアとして飾ることが流行しており、一般的な家庭でも地図に親しんでいたようです。この『絵画芸術』も当時のオランダの流行を取り入れているものと考えられます。
カトリック教徒を示すハプスブルク家の紋章
プロテスタントの国であるオランダにおいて、フェルメールは結婚の際にカトリックに改宗している可能性が指摘されています。
『絵画芸術』の天井から吊るされたシャンデリアの細工にハプスブルク家の紋章である鷲が見えるのは、ハプスブルク家がネーデルラントを統治した歴史があったことだけでなく、ハプスブルク家がカトリック教徒だったことも関係しているのでしょう。画家としてのキャリアのなかでは初期にしか宗教画を残していないフェルメールですが、こうしたアイテムからフェルメールの信仰への思いを伺い知ることができます。
基本情報
フェルメール展・開催中
2018年秋より東京・上野にてフェルメール展開催中、2019年2月からは大阪に巡回予定です。フェルメール展の展示作品や混雑状況、チケットの購入方法など別記事にまとめましたので、お出かけの参考になさってください。
●フェルメール展
上野の森美術館 2018年10月5日~2019年2月3日
大阪市立美術館 2019年2月16日~2019年5月12日
ヨハネス・フェルメールとは
フェルメールの生涯と作品の特徴
ヨハネス・フェルメールはバロック期に活躍したオランダの画家です。柔らかな光の溢れる風俗画が人気のフェルメールは、現存する作品が35点前後という寡作の画家でも知られます。
YouTube動画フェルメール全作品集
ヨハネス・フェルメールの全作品を4分にまとめた動画をYouTubeにアップしました。動画は今後も画家別に作っていく予定です。よろしければチャンネル登録をお願いいたします。