古代ローマ美術の特徴
ギリシア美術の良いとこどりな古代ローマ美術
芸術の理想美とも言われるギリシア美術の良いとこどりをしたのが古代ローマ美術。ギリシア美術と並び西洋美術の2大ルーツと言っても良いでしょう。
古代ローマ美術が古代ギリシア美術のコピーだと言われる理由には、ローマ美術の作者がほとんどが雇われたギリシャ人の工芸家であり、古代ギリシア美術が模範であったことが挙げられます。この時代の作品の多くは作者不詳で、素晴らしい作品を生み出したギリシア人たちの名前は分かっていません。
古代ローマ美術の時代区分
古代ローマ美術の時代区分は帝政初期、帝政中期、帝政末期の3つに分かれます。ギリシア美術のコピーから始まった古代ローマ美術は、大規模な都市建設や土木技術の発達に伴い、コロッセウムなどの建造物やトラヤヌス帝の記念柱などの歴史的浮彫、肖像彫刻へと発展していきました。
現存わずかな古代ローマ美術の絵画
古代ローマ美術というと、まず彫刻や建造物が思い浮かびますが、これはこの時代の絵画で現存しているものがごくわずかだからであり、古代ローマの歴史900年のうち現存している絵画は200年の期間のみ。それ以外の期間の絵画は、残念ながら消失してしまっています。描かれた主題は動物だけでなく、自然、風景、神話、宗教などのほか、人間のエロティシズムに向けられたものもありました。
古代ローマ美術・帝政初期
ブルータス胸像
「ブルータス、お前もか」の台詞が有名なローマ末期の政治家・軍人ブルータスの彫刻。現在、ブルータスの石膏像は石膏デッサンのモデルとしても馴染みが深いものとなっています。
所蔵:カピトリーノ美術館
プリマ・ポルタのアウグストゥス
プリマ・ポルタにあるリヴィアの別荘より発掘されたローマ美術の代表作で古代ローマ帝国初代皇帝アウグストゥスがモデルの彫刻。重厚で細かな細工の甲冑が見事な彫刻で、足元に座るのは女神ウェヌスの子とされるアモルです。大理石、高さ204cm。
制作年:紀元前28/27年以降
所蔵:バチカン美術館
古代ローマ美術・帝政中期
コロッセウム
コロッセウムまたはコロッセオ。ローマ帝政期に造られた円形闘技場で現在は首都ローマを代表する観光地となっています。4万5千人分の観客席、5千人分の立見席があり、約5万人の観客を収容できたといわれ、場内には人力エレベーターが有ったそう。人間と野獣の格闘、野獣を使ったキリスト教徒の迫害を見世物とした興行などが行われたとされています。
古代ローマの建造物が現存することはつまり、この時代の建築技術の高さ・堅牢さを示しているといえるでしょう。
製作年:79年
所在地:イタリア・ローマ
NHK・Eテレの人気美術番組びじゅチューン!には、5万人の観客ごと帽子になったコロッセオハットが登場しています。
トラヤヌス帝の記念柱
ローマとダキアの間のダキア戦争でローマ皇帝での勝利を記念し建設された記念柱。戦争の様子がらせん状に描かれた記念柱は大理石で出来ており、高さは約30メートル(台座を含めると38メートル)もあります。フリーズ(帯状彫刻)と呼ばれるレリーフが円柱をグルグルと回りながら続くのが特徴的です。
建設者:第13代皇帝トラヤヌス
製作年:113年
所在地:イタリア・ローマ
古代ローマ美術・帝政末期
コンスタンティヌス大帝の巨像の頭部
『コンスタンティヌス大帝の巨像の頭部』
ローマ帝国の皇帝であり、初めてのキリスト教徒皇帝だったウィウス・ウァレリウス・コーンスタンティーヌスをモデルにした彫刻。彫刻の頭部や手足の断片が現存しており、実際の彫刻の高さは12メートル以上あったとされています。
作者:不明
制作年:324年以降
所蔵:カピトリーノ美術館
ディオニュソスの秘儀
ポンペイの秘儀荘に残されたディオニュソスの秘儀が描かれた壁画。ディオニュソスはギリシア神話に登場する豊穣神、酒の神で、壁画はポンペイ・レッドと呼ばれる鮮やかな色彩が特徴的です。
作者:
制作年:BC50頃ポンペイ
所蔵:ポンペイ遺跡「秘儀荘」
エウトロピウスの像
『エウトロピウスの像』
ローマ帝国の政治家であり歴史家でもあったエウトロピウスの彫刻。
作者:不詳
製作年:5世紀後半
所蔵:ウィーン美術史美術館
ファルネーゼのアンティノウス
ローマ皇帝ハドリアヌスの愛人であったアンティノウスの彫刻。美青年であったとされ、多数の芸術作品に登場する人物です。
作者:
製作年:
所蔵:ナポリ 国立考古学博物館
ティトゥスの凱旋門
パリのエトワール凱旋門など凱旋門の手本となる建造物。近世において初めて復元作業が行われた建造物としても有名です。ティトゥスの凱旋門のレリーフ(浅浮き彫り)にはローマ時代の凱旋式の様子が刻まれています。
製作年:82年
所在地:イタリア・ローマ フォルム・ロマヌム