古代ギリシア美術の特徴
4つの時代に分かれるギリシア美術
ギリシア美術以前にはエーゲ文明やミケーネ文明がありました。それらをあらゆる面で受け継いだギリシア美術は西洋の美術の理想として取り上げられることも多い完成度・芸術性を誇ります。
ギリシア美術は、幾何学様式期、アルカイック期、クラシック期、ヘレニズム期の4つの時代に分けられます。
アルカイック期の彫刻が口角を上げて微笑む様子を「アルカイックスマイル」と表現しますが、日本人にも馴染みのある仏像彫刻のなかには、このアルカイックスマイルの影響を受けているものもあります。
クラシック期の彫刻はローマ時代にコピーされ、ルネサンスの芸術家たちの指針になり、今なお理想美の象徴となっていることから、まさに美術界の「古典」といえるでしょう。
古代ギリシア美術・幾何学様式期
クーロス
『クーロス』
Kouros
ギリシア時代の彫刻。クーロスは青年、コレーは少女を表します。クーロスは裸で左足を一歩前に出しているのが特徴で、腕はまっすぐ下に下ろしています。このあと、時代を経て、よりポーズや表情に表現力が加わっていきます。
中期幾何学様式のアンフォラ
『中期幾何学様式のアンフォラ』
Amphora of middle geometric style
ディピュロン出土。古代ギリシアの陶芸品。幾何学模様や水平な帯を配した壷絵が特徴的です。アンフォラは2つの持ち手と長く伸びた胴が特徴的な陶器で、ギリシアでは主に食べものの運搬や保存に用いられたと考えられています。
製作年:BC760頃
所蔵先:アテネ国立美術館
古代ギリシア美術・アルカイック期
将棋をさすアキレウスとアイアス
『将棋をさすアキレウスとアイアス』
黒像式アンフォラ。古代ギリシアの陶工,陶画家エクセキアスの画。高さ61cm。
製作年:BC530頃
所有:ヴァチカン美術館
オーセールの婦人像
『オーセールの婦人像』
1907年にオーセール美術館の保管庫で発見された像。アルカイック期の彫刻としては最も古いダイダロス様式の代表作で、短く切りそろえられた前髪とソバージュのような重い髪が特徴的です。高さ62cm。
製作年:紀元前7世紀後半
所有:ルーブル美術館
テネアのアポロン
『テネアのアポロン』
Apollōn; Apollo of Tenea
ギリシア時代のアルカイック期に作られたアポロンの彫刻。右足を後ろに引いた典型的なクーロス像で、1846年ペロポネソス半島東北部、コリントス近郊のテネアの墓地で発見されました。高さ153cm。
製作年:BC550年頃
所蔵先:グリュプトテーク美術館(ドイツ・ミュンヘン)
古代ギリシア美術・クラシック期(古典期)
ミュロン『円盤投げ』
ミュロン『円盤投げ』
Myron’s Diskobolos
ギリシア美術の代表的な彫刻。ミュロンの代表作はこの円盤投げとミノタウロスです。高さ169cm。
作者:ミュロン
製作年代:紀元前5世紀
フェイディアス『パルテノン神殿』
フェイディアス『パルテノン神殿』
古代ギリシア時代にアテナイのアクロポリスの上に建設された神殿。外光によって中央部が膨らんで見えるのを防ぐための技術エンタシスが用いられているのが特徴(柱の膨らみは荷重を支えるためという説もあり)。パルテノン神殿の建設総指揮を担当したのはフェイディアスだと言われています。
作者:フェイディアス
アルテミシオンのゼウス
『アルテミシオンのゼウス』ギリシア時代の彫刻でモデルは雷を投げる天界神ゼウスとされています。ブロンズ製、高さ209cm。
製作年:紀元前460-450年頃
所蔵先:アテネ国立考古学博物館
クリティオスの少年
『クリティオスの少年』
ギリシア彫刻におけるコントラポスト(重心を片脚にかけたポーず)の代表作。なにかの協議で優勝した少年像ではという説があるそうです。
作者:クリティオス
製作年:紀元前490-480年頃
所蔵先:アクロポリス美術館(ギリシャ)
古代ギリシア美術・ヘレニズム期
幼いディオニューソスを抱くヘルメス
『幼いディオニューソスを抱くヘルメス』
大理石製。オリンピアのヘルメスとも呼ばれます。
作者:プラクシテレス
製作年:不明
所蔵先:オリンピア考古学博物館(ギリシャ)
ミロのヴィーナス
『ミロのヴィーナス』ギリシア神話の女神アプロディーテーがモデルとされる古代ギリシアの代表的な彫刻。ミロ島で発見されたため、ミロのヴィーナスと呼ばれます。大理石、高さ203cm。
作者:アンティオキアのアレクサンドロス(詳細不明)
制作年:紀元前130-100年頃
所蔵先:ルーブル美術館(フランス)
サモトラケのニケ 女神像
『サモトラケのニケ 女神像』
Winged Victory,
女神ニケをモデルにしたギリシャ美術ヘレニズム期らしい躍動感のある彫刻。胴体や破片化した翼などを復元し、現在はルーブル美術館に展示されています。日本国内でもレプリカが大量に製作されており、目にする機会が多い彫刻のひとつです。大理石、高さ328cm。
作者:不明
製作年:紀元前200–190年頃
所蔵先:ルーブル美術館(フランス)
ラオコーン
『ラオコーン』古代ギリシアの彫像。大理石。神官ラオコーンと2人の息子が海蛇に巻きつかれたギリシア神話の一場面を彫刻にしており、隆々とした筋肉の表現、表情や動きの表現も優美かつ大変豊か。ギリシャ美術ヘレニズム期を代表する彫刻です。
作者:不明
製作年:不明
所蔵先:ヴァチカン美術館
アレクサンダーモザイク、アレクサンドロスとダレイオスの戦い
『アレクサンダーモザイク、アレクサンドロスとダレイオスの戦い』
1831年にポンペイで出土したモザイク画。紀元前333年に起こったイッソスの戦いがモデル。モザイク画は欠けている部分が多くあり、現在は復元予想図も公開されています。
所蔵先:考古学博物館
瀕死のガラティア人
『瀕死のガラティア人』
ギリシャ美術ヘレニズム期の彫刻。下を向きうなだれるガラティア人の手元には落ちた剣、首には縄。重心は右手にかかり、左手は負傷した脚を押さえているように見えます。
作者:不明
製作年:紀元前220年頃
所蔵先:カピトリーニ美術館(イタリア)
拳闘士の休息
『拳闘士の休息』
古代ギリシャ美術ヘレニズム期の彫刻。神官であり拳闘士であったといわれるテオゲネスがモデルで、テオゲネスはボクシングやパンクラチオンの大会で次々に優勝したとされる無敗のチャンピオンです。
製作年:紀元前1世紀半ば