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エル・グレコの生涯と作品の特徴・代表作・有名絵画を解説

エル・グレコとは? 画家プロフィール

マニエリスムの巨匠 エル・グレコ El Greco

エル・グレコ自画像

エル・グレコ自画像

エル・グレコはマニエリスムを代表する画家です。本名はドメニコス・テオトコブーロス、通称のエル・グレコで広く知られます。

スペインのトレドで宗教画を多く手がけたエル・グレコの代表作には『オルガス伯の埋葬』『無原罪の御宿り』『第五の封印』『ラオコーン』などがあります。

エル・グレコの生涯

1541年ギリシアのクレタ島に生まれたエル・グレコは、ヴェネツィアやローマで暮らし、ティツィアーノ、ティントレットらヴェネツィア派の影響を受けました。1572年には自分の工房を構え、この頃は主に個人向けの作品を手がけています。

その後30代後半にスペインのトレドに移住したエル・グレコは、トレドにあるサント・ドミンゴ・エル・アンティグオ教会の祭壇画などを手がけました。エル・グレコの墓はトレドで最初に祭壇画を手がけたこの教会にあります。

エル・グレコ作品の暗い色調やデフォルメしすぎに見えるプロポーションなど、独創的ともいえる表現は批判を受けることも度々で、エル・グレコの死後ほとんど評価されることはありませんでした。

エル・グレコが再び脚光を浴びるようになったのは、セザンヌが彼を評価したり、ピカソがラオコーンをリスペクトした作品を生んでからのことです。現在では「スペイン絵画史上初の偉大な著名人」と呼ばれるまでになりました。

エル・グレコが活躍したマニエリスムとは

マニエリスムとは、イタリア盛期ルネサンスの終わりからバロックの間の時期に起こった美術様式。語源はイタリア語の「マニエラ(様式)」で、英語では繰り返しを表す「マンネリズム」を意味する言葉です。

マニエリスムは、不自然なほど大げさに引き伸ばされた身体、曲がりくねったポーズ、遠近法が狂った空間に漂う人々など、技巧を凝らした表現が多用されているのが特徴です。マニエリスムの代表的な画家として、寓意が散りばめられたブロンツィーノ、空中を漂うような群像を描いたポントルモ、動植物を寄せ集めて肖像画を描いたアルチンボルドらが挙げられます。

エル・グレコの作品の特徴・鑑賞ポイント

マニエリスムのなかでもうねり表現の激しいエル・グレコ

エル・グレコ『無原罪の御宿り』

エル・グレコの絵画は全体的に色調が暗く、人体はアスペクト比を間違えて引き伸ばしてしまったかのように細長く捻じれて伸びきっており、強烈な違和感と幻想的なロマンが感じられます。

エル・グレコの作品の特徴は、美zんてぃん美術の伝統を忘れず、と同時にマニエリスム以前の美術様式である写実的な表現や神々しいような美しさとは真逆をいく独自の美意識を追求しました。

エル・グレコの代表作・主要作品解説

エル・グレコ『オルガス伯の埋葬』

エル・グレコ『オルガス伯の埋葬』

エル・グレコ『オルガス伯の埋葬』

作品名:オルガス伯の埋葬
作者:エル・グレコ
制作年:1586-1588年
種類:キャンバス、油彩
寸法:460cm×360cm
所有者:トレド・サント・トメ教会(スペイン)
ジャンル:宗教画(歴史画)
キーワード:

エル・グレコ『オルガス伯の埋葬』作品解説

エル・グレコ『オルガス伯の埋葬』は、エル・グレコの教区教会であったサント・トメ教会にある宗教画。葬儀の参列者の頭を境に上下2つに世界観が分かれているこの作品は、甲冑や法衣の素晴らしい描画力、絵の上半分とした半分でガラッと画法を変えた表現力に目を見張る出来となっており、エル・グレコの最高傑作とも言われます。

オルガス伯ルイスはトレド・サント・トメ教会に多額の遺産を残した人物。『オルガス伯の埋葬』の下部にはオルガス伯が聖アウグスティヌスと聖ステファヌスによって埋葬される場面が描かれており、葬儀の参列者として地元の名士たちや聖職者、エル・グレコ本人が描かれていることから集団肖像画にもなっています。

天上では聖母と聖ヨハネが昇天した貴族の魂を迎えています。天上の神たちはマニエリスム特有の細長くねじれたプロポーションをしていますが、エル・グレコの作品として考えると、その細長さはまだ少し控えめのようにも思えます。

独特な色彩と構図の宗教画で有名なエル・グレコですが、実は肖像画も得意としており、この作品からもエル・グレコの肖像画の表現力が見てとれます。

エル・グレコ『イエスの復活』

エル・グレコ『イエスの復活』

エル・グレコ『イエスの復活』

作品名:イエスの復活
作者:エル・グレコ
制作年:1595年
種類:キャンバス、油彩
寸法:275cm×127cm
所有者:プラド美術館(スペイン・マドリード)
ジャンル:宗教画(歴史画)
キーワード:イエス・キリストの復活

エル・グレコ『イエスの復活』作品解説

エル・グレコ『イエスの復活』は、磔刑に処されたキリストが復活した様子を描く宗教画。空中を歩くキリストは画面のこちら側に向け自信と尊厳に満ちた表情を見せています。

エル・グレコ『受胎告知(托身)』

エル・グレコ『受胎告知(托身)』

エル・グレコ『受胎告知(托身)』

作品名:受胎告知(托身)
作者:エル・グレコ
制作年:1596-1600年頃
種類:キャンバス、油彩
寸法:315cm×174cm
所有者:プラド美術館(スペイン・マドリード)
ジャンル:宗教画(歴史画)
キーワード:受胎告知

エル・グレコ『受胎告知(托身)』作品解説

エル・グレコ『受胎告知(托身)』は、聖処女マリアが受胎した様子を描いた祭壇画の一部。宗教画の主題として定番であり多くの画家が手がけている受胎告知。エル・グレコも例外ではなく、受胎告知を主題とした絵画・祭壇画を何点も描いていますが、このプラド美術館所蔵の『受胎告知』は、大天使ガブリエルが聖処女マリアに受胎告知する場面ではなく、マリアが受胎した瞬間が描かれているのがポイントです。

エル・グレコ『トレド風景』

エル・グレコ『トレド風景』1596-1600年頃

エル・グレコ『トレド風景』

作品名:トレド風景
作者:エル・グレコ
制作年:1596-1600年頃
種類:キャンバス、油彩
寸法:121.3cm× 108.6cm
所有者:メトロポリタン美術館
ジャンル:風景画
キーワード:

エル・グレコ『トレド風景』作品解説

エル・グレコ『トレド風景』は、スペインの町トレドを描いた油彩画。トレドは「シンボル的な存在」としてエル・グレコを受け入れてくれた町でした。エル・グレコの描くトレドの風景は、見たままではなく、エル・グレコらしいうねりや色使い、重い空気と雷鳴が轟きそうな暗い空が特徴的で、エル・グレコが人体以外にもエル・グレコたる表現を見せている作品です。

エル・グレコ『無原罪の御宿り』

エル・グレコ『無原罪の御宿り』

エル・グレコ『無原罪の御宿り』

作品名:無原罪の御宿り
作者:エル・グレコ
制作年:1608-1613年
種類:キャンバス、油彩
寸法:347cm×174cm
所有者:サンタ・クルス美術館(スペイン)
ジャンル:宗教画(歴史画)
キーワード:

エル・グレコ『無原罪の御宿り』作品解説

エル・グレコ『無原罪の御宿り』はエル・グレコ晩年の代表作。エル・グレコが移住したトレドの景色が描かれており、螺旋を描きながら聖母マリアが昇天する様子が描かれた宗教画です。無原罪の御宿りはマニエリスムのあとに始まるバロック美術で頻繁に描かれた主題でもあります。

エル・グレコ『第五の封印』

エル・グレコ『第五の封印』

エル・グレコ『第五の封印』

作品名:第五の封印
作者:エル・グレコ
制作年:1608-1614年
種類:キャンバス、油彩
寸法:222.2cm×193cm
所有者:メトロポリタン美術館(アメリカ・ニューヨーク)
ジャンル:宗教画(歴史画)
キーワード:

エル・グレコ『第五の封印』作品解説

エル・グレコ『第五の封印』はトレドにあるタベラ施療院礼拝堂のために描かれた祭壇画。新約聖書の最後に配されたヨハネの黙示録6章を題材としており、ヨハネ(左端)と墓場から現れた殉教者の魂が天に向かって呼びかける様子が描かれています。現在はアメリカ・メトロポリタン美術館所蔵です。

エル・グレコ『ラオコーン』

エル・グレコ『ラオコーン』

エル・グレコ『ラオコーン』

作品名:ラオコーン
作者:エル・グレコ
制作年:1610-1614年
種類:キャンバス、油彩
寸法:137cm×172cm
所有者:ナショナル・ギャラリー (イギリス・ロンドン)
ジャンル:歴史画
キーワード:

エル・グレコ『ラオコーン』作品解説

エル・グレコ『ラオコーン』は、エル・グレコの作品のなかで唯一の神話画です。エル・グレコはトレドに移住する前にローマを訪れており、その際にミケランジェロの作品から良くも悪くも多大な影響を受けたとみられ、エル・グレコはミケランジェロから受けた衝動を本作品『ラオコーン』にぶつけました。

エル・グレコ『十字架のキリスト』

エル・グレコ『十字架のキリスト』

エル・グレコ『十字架のキリスト』

作品名:十字架のキリスト
作者:エル・グレコ
制作年:1610年頃
種類:キャンバス、油彩
寸法:95.5cm×61cm
所有者:国立西洋美術館(日本)
ジャンル:宗教画(歴史画)
キーワード:キリストの磔刑

エル・グレコ『十字架のキリスト』作品解説

エル・グレコ『十字架のキリスト』は、十字架に磔にされたキリストが描かれた油彩画。骸骨や人骨が転がる薄暗い荒野にマニエリスムの特徴であるS字にうねったキリストの身体が浮かび上がっています。

このエル・グレコ『十字架のキリスト』は、東京・上野の国立西洋美術館の常設展で見ることができます。

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