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初期ルネサンスの絵画と芸術家

初期ルネサンス絵画の特徴

初期ルネサンス美術とは

ボッティチェリ『ヴィーナスの誕生』「再生」を意味するルネサンスでは、キリスト教美術一色だったロマネスクやゴシックの雰囲気からガラッと変わった芸術が誕生します。1400年代の美術である初期ルネサンスはクアトロチェント(イタリア語で400)とも呼ばれ、中部イタリアの裕福な都市国家フィレンツェを中心に盛り上がりを見せ、この後レオナルド・ダ・ヴィンチらが活躍する盛期ルネサンスへの土台となりました。

ギリシャ美術ローマ美術をお手本とした初期ルネサンス美術には神話を題材とした作品が多く、宗教画以外の裸体表現も見られます。そして、ギリシャ美術やローマ美術を極めさらにハイレベルな表現を目指し、遠近法や人体の解剖学などを取り入れ、写実性が高く人間味に溢れた表現が見られるようになります。

15世紀後半になると、メディチ家を中心に人文主義者やボッティチェリら芸術家によるプラトン・アカデミー(メディチ・サークル)が起こり、プラトンに関する討論を行うようになります(新プラトン主義)。ボッティチェリの『ヴィーナスの誕生』などの作品には、このプラトン主義が反映されています。

チマブーエとその弟子ジョットから始まったといわれるルネサンス美術は建築、彫刻、絵画などあらゆる分野で多くの芸術家が活躍しました。初期ルネッサンスの三大巨匠としては、彫刻家ドナテッロ、画家マザッチオ、建築家ブルネッレスキが挙げられます。

建築には芸術的で調和のあるデザインが登場し、これまでのような教会建築だけではなく、宮廷や市役所、個人宅などにも優れた建築物が登場しました。

初期ルネサンス美術の代表的な芸術家

建築ではブルネッレスキやアルベルティ、彫刻では『ダヴィデ像』のドナテッロなどが活躍したルネサンス期。

絵画の世界では『ヴィーナスの誕生』のボッティチェリ、『受胎告知』のフラ・アンジェリコ、『貢の銭』のマザッチオ、『キリストの洗礼』のヴェロッキオなどが活躍しました。

初期ルネサンス絵画の作品・代表作

初期ルネサンスを代表する画家であるボッティチェリフラ・アンジェリコマザッチオマンテーニャの作品はそれぞれ画家別に、初期ルネサンスの彫刻と建築、彫刻家ドナテッロは別ページにまとめました。

ジョット『ユダの接吻』

ジョット・ユダの接吻ジョット『ユダの接吻』

ルネサンスの父と呼ばれたジョットはフィレンツェ派の代表的な画家として活躍しました。

ユダの接吻は、ユダの接吻によってイエスが誰であるか兵士に知れることになり、イエスが捕らえられた場面。銀貨30枚のためにイエスを売ったユダは裏切りや卑劣を表す黄色いマントを羽織った姿で描かれています。

作者:ジョット(ジョット・ディ・ボンドーネ)
制作年:1304-1306年
種類:フレスコ
サイズ:200cm×185cm
所有者:スクロヴェーニ礼拝堂(イタリア)

フィリッポ・リッピ『受胎告知』

フィリッポ・リッピ『受胎告知』フィリッポ・リッピ『受胎告知』

大天使ガブリエルが聖マリアにイエスの妊娠を告げる新訳聖書の一場面を描いたテンペラ画。

後に活躍するボッティチェリの師として知られるフィリッポ・リッピは修道士と画家を兼任していたときに30歳も年下の修道女とかけ落ちをしてしまいます。死刑になってもおかしくない大罪を犯しながら、コジモ・ディ・メディチによる教皇へのとりなしで還俗し死刑を免れました。

作者:フィリッポ・リッピ
制作年:1440年代
種類:テンペラ・板
サイズ:175×183 cm
所有者:サン・ロレンツォ聖堂(イタリア・フィレンツェ)

フィリッポ・リッピ『聖母戴冠』

フィリッポ・リッピ『聖母戴冠』フィリッポ・リッピ『聖母戴冠』

天に召されたマリアが天国のキリストに迎えられ載冠を受ける場面を描いたテンペラ画。

作品名:聖母戴冠
作者:フィリッポ・リッピ
制作年:1441-1444年
種類:テンペラ
寸法:200cm×287cm
所有者:ウフィツィ美術館(イタリア・フィレンツェ)

フィリッポ・リッピ『聖母子と二天使』

フィリッポ・リッピ『聖母子と二天使』フィリッポ・リッピ『聖母子と二天使』

モデルは駆け落ちした30歳年下の元修道女であり妻となったルクレツィアとその子供たちです。

作品名:聖母子と二天使
作者:フィリッポ・リッピ
制作年:1465年
種類:板、テンペラ
寸法:95cm×62cm
所有者:ウフィツィ美術館(イタリア・フィレンツェ)

ヴェロッキオ『キリストの洗礼』

ヴェロッキオ『キリストの洗礼』ヴェロッキオ『キリストの洗礼』

レオナルド・ダ・ヴィンチの師として知られるヴェロッキオの油彩&テンペラ画。

ヴェロッキオの工房には、弟子としてレオナルド・ダ・ヴィンチやボッティチェリらがいました。この作品はレオナルドとの共作といわれ、左端の天使とその奥の風景はレオナルドが描いたとされています。レオナルドの才能に驚嘆し衝撃を受けたヴェロッキオは画家を辞め彫刻に専念することになり、『バルトロメオ・コッレオーニ騎馬像』というブロンズ像の傑作を残しました。

作品名:キリストの洗礼
作者:ヴェロッキオ
制作年:1472-1475頃
種類:板、油彩
寸法:177cm×151cm
所有者:ウフィツィ美術館(イタリア・フィレンツェ)

ウッチェロ『サン・ロマーノの戦い』

ウッチェロ『サン・ロマーノの戦い』ウッチェロ『サン・ロマーノの戦い』ウッチェロ『サン・ロマーノの戦い』
遠近法を駆使したテンペラ画の三部作。現在の所蔵先は3点それぞれ異なります。

作者であるパオロ・ウッチェロは、線遠近法を用い、数学的な観点から絵画表現を追及した画家です。

作品名:サン・ロマーノの戦い
作者:パオロ・ウッチェロ
制作年:1450年頃
種類:テンペラ
所有者:ナショナル・ギャラリー、ウフィッツィ美術館、ルーブル美術館

ウッチェロ『竜と闘う聖ゲオルギウス』

ウッチェロ『竜と闘う聖ゲオルギウス』ウッチェロ『竜と闘う聖ゲオルギウス』

白馬に跨ったゲオルギウスが長い槍で竜を退治する場面を描いたテンペラ画。ゲオルギウスは竜を退治したことで有名な聖人です。

作品名:竜と闘う聖ゲオルギウス
作者:ウッチェロ
制作年:1470年
種類:テンペラ
寸法:56.5cm×74cm
所有者:ナショナルギャラリー(イギリス・ロンドン)

ベッリーニ『ヴェネツィア総督ロレダーノ』

ベッリーニ『ヴェネツィア総督ロレダーノ』ベッリーニ『ヴェネツィア総督ロレダーノ』

当時のヴェネツィア総督レオナルド・ロレダーノ(ロレダン)を描いた油彩画。顔の皺から服の糸に至るまで緻密な表現がちりばめられたベッリーニの代表作です。

兄は画家のジェンティーレ、妹の夫はマンテーニャであり、ベネツィアで大工房を営んでいたベッリーニはヴェネツィア派を代表する大画家でありながら、積極的かつ柔軟に新しい技法や表現方法を取り入れる画家でした。

作品名:ヴェネツィア総督ロレダーノ
作者:ジョヴァンニ・ベッリーニ
制作年:1501頃
種類:油彩
寸法:61.5cm×45cm
所有者:ナショナル ギャラリー(イギリス・ロンドン)

ピエロ・デッラ・フランチェスカ『聖十字架伝説』

ピエロ・デッラ・フランチェスカ『聖十字架伝説』ピエロ・デッラ・フランチェスカ『聖十字架伝説』

キリストが磔刑に処せられた際の十字架に使われた木にまつわる伝説を描いたテンペラ画。

遠近法を研究していたピエロ・デッラ・フランチェスカは、フェデリコ・ダ・モンテフェルトロをパトロンに持ち、スペインやフランドルの画家たちの表現技術や油彩技法を吸収しました。

作品名:聖十字架伝説
作者:ピエロ・デッラ・フランチェスカ
制作年:1466年
種類:フレスコ
所有者:聖フランチェスコ聖堂(イタリア・アッシジ)

ピエロ・デッラ・フランチェスカ『キリストの洗礼』

ピエロ・デッラ・フランチェスカ『キリストの洗礼』ピエロ・デッラ・フランチェスカ『キリストの洗礼』

キリストが洗礼を受ける場面を描いたテンペラ画。キリストの合わせた手が画面のちょうど真ん中にあり、まっすぐに立つキリストと洗礼者ヨハネの動きの対比がリズムを生み出しています。

作品名:キリストの洗礼
作者:ピエロ・デッラ・フランチェスカ
制作年:1450年
種類:油彩
寸法:168cm×116cm
所有者:聖フランチェスコ聖堂(イタリア・アッシジ)

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